「表にいらっしゃい」
女の人の声が聞こえ、夏樹は神妙な面持ちでそのまま進んでいく。
迷路のような大きな庭園を抜け、通されたのは来客用の和室だった。
部屋にはやはり生け花が飾られている。
畳のヘリをきちんと踏まぬように歩く。
夏樹の隣に腰を下ろせば、障子が開き着物を着た奥方と旦那様らしき人物が入ってくる。
そして、遅れてくるように可愛らしい美人な女性も。
年齢は同じくらいだろうか、着物を着てたたずまいよく座るその姿は自分なんかよりもずっと夏樹にふさわしいとすら思わされる。
「久しぶりだな、夏樹」
男性のほうが最初に口を開いた。
出された声はいたって普通でしょっぱなから怒鳴り散らかされることも想定していた冬華にとって、意外な始まりだった。
「久しぶりです、父さま、母様」

