花と雫


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「家でっかいね」

目の前に大きくたたずむ日本家屋に思わずそんな声が漏れてしまう。
さすが家元である。

「でかいだけだよ」

隣でそう微笑む夏樹はやはり絵になる。
道中すれ違う人が、「あの人かっこいい」と言っていたのを何回聞いたことか。
そんな人の恋人役など務まるのかが少々不安だがここまで来て引き返すような人間でもない。

大きな門に備え付けられたインターフォンを夏樹が押した。

「夏樹です。開けてください」

そう一言いえば、大きな門は自動で開いていく。
まるで映画のワンシーンである。