ちらりと時計を見れば、かれこれ時間が早く経ち、もうすでに8時50分前後であった。
そろそろだなーなんて思いつつ、少し内巻きにした髪の毛をもてあそぶ。
そうしていると、ちょうどピンポーンというチャイムがなった。
冬華はほんの少しだけ高さのあるヒールを履き、外に出た。
「おはよう」
開けた瞬間、いつもより倍かっこいい夏樹が目に入ってくる。
と、顔を見つめていると夏樹は大きく目を見開き動揺している。
「え、っと、冬華ちゃん、だよね?」
そうでなければ一体何なんだと思い、思わず笑ってしまう。
「そうだよ、夏樹のために頑張っちゃいました」
なんて冗談交じりに言えば、ほんの少しだけ夏樹の頬に赤みがさしたような気がする。
「すごい、可愛いよ。ほんとう、すごく、綺麗」
夏樹は口元を覆いながら、そんな言葉をさらっと言ってのける。
冗談で言ったつもりが、夏樹の天然純粋な反応にこっちまでもが恥ずかしくなってしまう。
「ありがとう、じゃあ、行こっか」
そう微笑めば、夏樹は頷き歩き出した。
うまくいけばいいな、なんて思いつつ。

