花と雫


***
ただいま午前7時半。
準備を開始するにはちょうどいい時間である。
女の支度は長いというが冬華はまさに典型的なそれであった。

ひとまず昨日決めた服に着替える。
白色淡色ではあるが、ところどころに花弁が散っていて可愛いデザインになっている。
華道の家元だからと意識したわけではなかったが、ちょっとでもいい方向に向いてくれればなと思う。

次に顔である。
あまり主張しすぎないが、夏樹と並んで普段よりずっとましになりそうな清楚メイクを施していく。

まさかこんなところでメイクの腕が役立つとは思いもしなかった。
最後に髪の毛をセットし、練香水を耳の裏辺りに塗る。
液体の香水よりも自然に香る練香水が最近のはまりとなっている。
さすが、というべきなのかその辺のセンスに関しては麗奈がぴか一でたまにプレゼントしくれるのだ。

鏡に映った自分を見ながら思わず苦笑する。
我ながら化けるものだ。
否、化けなければやっていられないことをしているから自然とそうなるのだが。