「えっと、本当に急で申し訳ないんだけど、明日俺の恋人のフリしてくれないかな?」
そういわれ、一瞬脳内が停止する。
それは拒否っているのではなく、
「その役、ホントに私で大丈夫?」
心配からである。
恋人役なら美穂が適任のように思える。
はたから見ても美男美女だし。
「冬華ちゃんにしか頼めなくて、俺家がさ、華道の家元なんだけどお見合いの話が上がってるらしくて。それで、それを受ける気はさらさらなくて。だから言っちゃったんだ『今、お付き合いしている人がいるからその人と結婚したい』って」
驚くべきことが多すぎて何から驚けばいいのかもはや分からないが、要するに自分とは縁のない世界の話だということは分かった。

