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「ねぇ、ユリ。私余計なことしちゃったかな?」

家を出るなり、麗奈が少し心配そうにユリに尋ねる。
なんだかんだ言いつつ、一番の心配性は麗奈だと改めて思う。

「大丈夫だと思うよ」

そう言うも麗奈の顔は晴れない。
先ほどの態度とは打って変わったものである


麗奈が不意に立ち止まった。

「私はさ、みんなに幸せになってほしいだけなんだけどね」

「私たちはさ、少し不器用なだけなのよ」

私も含めて、と付け足せば麗奈は悲しそうに笑う。


「もうすぐ、夏が来るわね」

麗奈がまぶしい日差しを手で遮りながら言う。
まるで、「来るな」と言っているように。

「そうね」

ユリは短くそう返すと照り付け始めた太陽を同じように遮る。

___あぁ 夏なんて、来なければいいのに。