「や、夜神!!もういいから、放してあげて!!あたしは大丈夫だから!ね!?」


「っ!田畑さん……。」



夜神の手が緩んだせいか、智国くんはするりと抜け出すと、


「~~ってめえらにもう関わってられるか!!勝手にやってろッ!!!」


という捨て台詞を吐き捨てると、自転車に乗ってそそくさと走り去ってしまった……。




辺りが一気に静まり返る。


さっきの嵐みたいな出来事がもうどこか過去のことのように思えた。



あたしは智国くんに掴まれていた腕にそっと右手を当てる…。


ジンジンとした痛みがとてもリアルに心に押し寄せてきた。



でもそれ以上に心が高鳴る正体をあたしは視界に捉える。




夜神っ……!



夜神が、久しぶりに目の前にいる……!




あの親睦会以来、夜神とこんなに近くで居たことはなかったから、


あたしはなんだか泣きそうになる。





夜神、助けに…来てくれたの……?



あたしは夜神に、あんなに酷いことを言ったのにっ。



目頭が熱くなってきて、夜神から目がそらせない。



そ、そうだ!


見惚れてる場合じゃない…!



夜神に言わなきゃっ!



夜神は智国くんが去った方向へ向いていた。


あたしは覚悟を決めて夜神に話しかける!



「……っ夜神、」


「別に、今のは深い意味はないから。」


「え……?」


「ただ困ってたみたいだから助けただけで。好きとか、そんなの冗談だから。」



ズキッ!



つまりそれって、



もう “好きじゃない” ってこと…?