「そっか〜。あれだけ麻莉奈のこと構ってたのにな〜!」


「……でも、あたしが夜神にしたことは、最低なことだから。多分……、知らずとはいえ夜神を傷つけていたのは間違いないから……。」


あたしは肩を落とし、俯いてお弁当をただ見つめる。



瑠衣はそんなあたしを見ると溜息まじりに言った。


「まあでも、仕方ないんじゃない?その時はまだ麻莉奈に好きっていう自覚が無かったわけだし。あと今の夜神はただ拗ねてるだけだからなぁ……。」


「え?拗ねてる??」


「うん。だから夜神の無視に関しては時間が解決してくれるって!」


「……………。」



あたしは少しの間考えこむと、静かに瑠衣に告げた。



「あたし、あれだけ少女漫画を読んでいたのに、夜神のこともそうだけど自分の感情にさえ気づけなかったんだよね……。本当に馬鹿だよね…。」


恥ずかしくて情けない思いを弱音というかたちでこぼした。



「そうかな?」


「え……?」



瑠衣はなんてことないように言ってのける。


「だって漫画と現実じゃそれは違うに決まってるもん。恋ってそのもの自体が複雑な感情があるでしょ?それを全部漫画に当てはめるなんて出来ないしさ。」


「そ、そうかな…。」


「そうだよ!恋愛も一人一人違ってていいんじゃない?これっていう正解なんてないんだから。」



瑠衣…。


彼女の言葉に救われた自分がいた。



不思議と元気が湧いてくる…!



そしてあたしは暫く握った箸を見つめながら、ある決意を固めた。



「…瑠衣。あたし、夜神にちゃんと伝えてみる。夜神のこと好きだって本人に伝えるよ!」


「…!うん!頑張って麻莉奈!!そうと決まれば、ご飯食べよう!」



そうしてこの昼休みは、瑠衣の力いっぱいの激励を受けて背中を押されたのであった。