「え?…ーーん!!」


その瞬間、あたしの唇に夜神の形の良い唇が合わさった。



「んん!!待っ……ッ!」


どんどん深くなる口付けに全てを飲み込まれそうになる!



強引で、


一方的で、


それでも優しい。



だけどその優しさを感じる余裕は、この時のあたしにはなかった。


自分が自分じゃなくなるみたいで、ただただ恐くて…。




ーーッ駄目!!




パンッ!




気がつくとあたしは、夜神の頬を叩いていた。




「はあ、はあ。」


「…………っ。」



荒くなった呼吸を必死に整える。


対する夜神も息が少しだけ乱れていた。



暫くお互いの息遣いが辺りに響くと、夜神はくるりと踵を返す。


そして二、三歩進んで立ち止まると顔だけやや横に向いた。




夜神………?



またさっきと同じことをされるんじゃないかと思い、身構える!




すると。



「……んで、勝手にそうやって何でも決めつけようとするんだよ…!」


「え……。」



夜神の苦しそうな声に目を見張った。



「こんなに想ってんのに…!田畑さんに言ってること、嘘なんか無いのにっ!」


「………っ。」


「それでも迷惑っていうなら安心してよ。……もう、構わないから。」



そう言い残して、夜神は一度も振り返らずにその場を去っていった…。




や…がみ………。



あたしはホッとした安心感からなのか、さっきの恐怖からなのか、


体から力が抜けてペタンとその場で座り込んでしまう。



そしてじわりと涙が滲んできて、それは頬を伝った。




問題児の夜神が居なくなっても、心は苦しくて苦しくて、


この感情の正体が何なのか分からないまま、



あたしは瑠衣からの着信が来るまで動けなかった…。