「失礼しました。」


クーラーの効いた職員室に少し未練を残しつつ、あたしは早々に立ち去った。



本当は先生に進路相談とかしたかったけど…。


さっきの姿を他の先生や生徒にじーっと見られて、居づらくなって出てきちゃったんだよね。


そんなに大して珍しいことではないと思うけどな。



……って、うちの家族以外では珍しいことだったんだ…。



日常で腕力を使わないようにあれほど気をつけていたはずなのに、今では校舎のあちこちで物珍しそうに見られてしまう。


そんな学校には正直うんざりしていた。




あたしの家系は代々人並み以上に力があって、家族は母親以外みんな筋肉質で力持ち。


その事はご近所でも知られていて、町内でのゴミ拾いやイベントでの力技を必要とされる時は必ず借り出されてしまう。


なかでも父親と兄たちは己の身体を鍛え上げることに生きがいを感じていて、時間があるときはジムへ行って汗を流している。



そんな田畑一家だ。



だから力があることは子供の頃から当たり前だと思っていたし、誇りだった。



でもそれは昔までで、思春期に近づくにつれて周りの目を気にするようになると、あたしはその力を封印するようになった…。





だって……。




現状を見れば、それはよくわかる…。