「さ、出来たよ。運んでくれる?」


「待ってました。」


私の声に、聡志が嬉しそうに立ち上がると、キッチンに入って来る。


「おっ、すげぇ。」


お昼から、張り切って準備してたから、結構豪華版・・・のつもり。聡志も顔をほころばせてくれたけど、ふとある物が目に入って、呆れた声を出す。


「なぁ、その唐揚げ、何人で食うつもりなんだよ。」


聡志の視線の先には、大皿にもられた鶏の唐揚げ。


「だって、聡志好きなんでしょ?」


「好きだし、美味いんだけどさぁ・・・。前の時もそうだったんだけど、モノには限度ってものが。だいたい作ってもらって、文句言っちゃ申し訳ないんだけど、クリスマスの鶏って言ったら、ロ-ストチキンだろ。」


「簡単に言わないでよ、私だって何でも作れるわけじゃないんだから。いいじゃん、とにかくいっぱい食べて。聡志が喜んでくれると思って、張り切って作ったんだから。もし余ったって、明日食べてくれるでしょ?この前の時と違って。」


そう言って私は聡志に笑いかける。そう、前に唐揚げ作ってあげた時は、途中でケンカになっちゃって・・・、それに次の日まで、一緒にいられるような関係でもなかった。


(ヤベ、可愛すぎる。でもこいつ、俺の彼女なんだよなぁ。今更ながら、すげぇ嬉しくなる。)


私から視線を外して、ちょっと照れ臭そうにしてる聡志が、そんなことを考えてるなんて、当然わかんなかったけど。


それから2人で、料理をテ-ブルに並べる。やっぱり張り切って作りすぎたかな?でもいい、だって2人きりで、こうして迎えるイブが嬉しくてしょうがないんだもん。


真ん中に、聡志の買って来てくれたケーキを置いて、そしてシャンパン・・・というわけには、まだいかないから、サイダ-をグラスに。


「すげぇな。」


「うん。」


「全部食ったら、身体壊しちまいそう。」


「2.3日寝込んでもいいよ、ちゃんと看病してあげる。その間、一緒にいられるし。」


「由夏・・・。」


また、照れ臭げに視線を逸らす聡志。


「さ、つけよ。」


そんな聡志を促して、私達はケ-キのキャンドルに火をともし始める。


「去年さ。」


「うん?」


「あんなことにならなかったら、俺、お前と一緒にケ-キ食べようと思ってたんだ。でも、徹夜に近くなっちゃったし、次の日またのこのこ押しかけて、勉強の邪魔するのも嫌だから、止めたんだ。」


「そうだったんだ。」


「その時、思ったことがある。来年のイブには一緒にケ-キ食べられる子がいればいいなぁって。それが由夏なら、まさに満願成就。本当にありがとうな。」


「聡志・・・。」


「去年のイブは朝で解散、でも今年はずっと一緒にいられる。」


「電気消すよ。」


今度は私が照れ臭くなって、そう言っていったん聡志の前から逃げる。でもスイッチを切った次の瞬間


「聡志、メリ-クリスマス。」


突然の私の言葉に、一瞬虚を突かれて、驚く聡志。


「去年のイブ、聡志は帰る時、私にこの言葉を贈ってくれた。だけど、私は今の聡志みたいに、ちょっと驚いちゃって、何にも言えなくって。だから1年越しの私からのメリ-クリスマス。受け取ってもらえたかな。」


「確かに、いただきました。」


笑顔で答えてくれる聡志のもとに、私は歩を進める。そして聡志の前に立って、そっと彼を見上げた。


「メリ-クリスマス、由夏。」


「うん。」


そう答えて、そっと目を閉じた私に、甘くて、優しくて、とっても幸せなキスが降って来た。



END