駅の反対方向に走って行った自分が、どうやって家に帰ったのか、全く記憶がない。だけど、気が付いたら、私は自分の家の自分の部屋で泣いていた。


泣きながら、帰って来た私を見て、両親が驚いて、いろいろ声を掛けて来たけど、私は何も答えず、そのまま自分の部屋に飛び込んだ。


残酷だよね、誰よりもそばにいたはずなのに、誰よりも一緒にいたはずなのに・・・。いつのまにか、その距離がどんどん離れて行って、自分の本当の気持ちがわからなくなって、戸惑って、グズグズしてる間に、とうとう取り返しのつかないことになっちゃった・・・。


どうして、こんなことになっちゃったんだろう?原因はいろいろあるんだろうけど、きっと私達は、そういう関係になれる運命ではなかったんだってことだよね。私だって、ずっと聡志を想ってたわけじゃないし、聡志は私の事なんて、とっくに・・・。


仲良かったことも悪かった時もあったけど、学校に行けば、あいつの顔を必ず見られた3年間は、もうすぐ終わり。


いっそ、そのままもう顔見られなくなった方が、楽だったかな。昔ほどじゃないにしても、家は近いし、親同士は仲良しだから、これからだって、顔を合わせる機会はきっとある。その時、私、普通にあいつと話せるかな?


ううん、そんな先の話じゃない。明後日、あいつに会ったら、私どんな顔すればいいの?よかったね、幸せになってねって言うの?そしてニッコリ微笑んだりするのかな・・・?とてもそんな自信ない。あいつの前で、泣いちゃったらどうしよう、卒業式だからって誤魔化すしかないよね・・・。


頭の中も、泣きはらした顔もぐちゃぐちゃになって、落ち込んでいると、突然携帯が鳴り出した。


こんな時に誰?と思いながら、ディスプレイを見ると、「水木悠」の文字が。悠からなら、出ないわけにはいかない。私は電話に出るのに関係ないと思いながら、涙を拭って、通話ボタンを押した。


「もしもし」


『岩武か?』


だけど聞こえて来たのは、男子の声。私が戸惑っていると


『俺だ、白鳥だよ。』


「先輩・・・。」


先輩がなぜか悠の携帯から。先輩とはケ-番交換してるのに、なんでだろう?


『明日、暇か?』


「はい・・・。」


『じゃ、デートしよう。』


「えっ?」


先輩、何言い出してんの?親友の彼氏とデ-トなんて、出来るわけないじゃん・・・私が言葉を失ってると


『安心しろ、悠公認だ。だから悠の携帯からわざわざ電話してるんだ。』


「じゃ、悠も一緒に、ってことですね?」


『違う、2人で話がしたいんだ。』


どういうこと?・・・再び言葉を失う私に構わず、先輩は続ける。


『明日の10時、この間、みんなで待ち合わせたファミレスで待っててくれ。』


「でも・・・。」


『じゃ、必ず来てくれよ。』


「ちょっと、先輩!」


呼び止める私の声に構わず、先輩は電話を切ってしまった。


(一体、どういうこと・・・?)


お陰で涙は止まったけど・・・私は訳が分からず、呆然とするしかなかった。