こうして、俺達の最後の試合は終わった。完敗だったけど、やり切った、その満足感が、俺達をそのあとの学食での打ち上げ会で弾けさせた。


それも夕方にはお開きとなり、俺達3年生有志は、その後、ファミレス、カラオケへ繰り出して2次会(?)。夜9時くらいまで、賑やかに過ごした。


明日は卒業式の予行練習で登校だから、「また明日」と言い交しながら、三々五々家路に着く。俺は白鳥先輩と帰宅の途に。


実は、昨日は白鳥先輩の家に泊めてもらった。そしていろんな話をした。野球の話が多かったけど、それ以外のことも話した。


「岩武に連絡しなくていいのか?」


大学の練習の参加してる間も、そして昨夜も由夏から何度も連絡があった。だけど、俺は応答していない。別に、その前にあいつから連絡を無視されたことに対する意趣返しのつもりはない。申し訳ないと思ってるが、今はあいつと話す心の準備が出来ないんだ。



「今はあいつと何を話したらいいか、なんて声掛ければいいか、わかんないから。」


俺はボソッと答える。


「でも、このまま無視してるわけには、いかんだろ。明日は嫌でも学校で会うんだし。」


「別に嫌じゃないですけど・・・。やっぱりちょっと嫌かな、今は。」


苦笑いの俺に


「これ以上話しても、昨日の繰り返しになるだけだから、もう言わないが、メ-ルだけでも入れてやれ。必ず連絡するから少し時間をくれって。後で後悔したくなかったらな。」


「・・・わかりました。」


先輩の親身のアドバイスに俺は頷く。


「でも、賭けは俺が勝った。それだけは間違いない事実だぜ。」


「わかってます。でも今の俺にはやっぱりわからない、あいつの気持ちも、そして自分自身の気持ちも。」


そう言って、俺は先輩の横顔を見る。だけど先輩はまっすぐ前を向いたまま、歩を緩めることなく、歩き続ける。


「やっぱり正解だったな。」


「何がです?」


「お前を今日、投げさせたこと。」


「えっ?」


ここで先輩は立ち止まって、俺の方を見た。


「お前、前に俺に言ってたよな。キャッチャ-は、人間観察に長けてなきゃ、務まらないって。」


「はい。」


「だったら、お前、大したキャッチャ-じゃないってことだな。だって、肝心の1番大切な人の気持ちすら、わかんないだから。」


「先輩・・・。」


突然の言われように、言葉を失う俺に、先輩は


「行こう。」


とだけ言うと、何事もなかったように、また歩き出した。