私は今、緊張の中にいる。年が明け、悠を始めとしたクラスメイト達と健闘を誓い合った始業式の日から、はや1月余り。私は第一志望の合格発表日を迎えていた。


自分と同じ場所を目指す人の流れの多さに、改めて驚きながら、私は歩を進める。今頃、親友も同じように、第一志望の発表を見に行っているはずだ。早く結果を見たくて、走り出したくて、でも見るのが怖くて足を止めたくなるような、複雑な心境だった。


校門をくぐると、掲示板に向かう時間が、すごく長く感じて。でもついに掲示板が近くに迫って来て・・・私は1つ深呼吸をすると、勇気を出して、番号に目を走らせた。そして・・・


(あった!)


思わず握りしめていた受験票に目を落とす。もう暗記するくらい、何度も確認したはずの、自分の受験番号。でも私はもう1度確認しなければ、いられなかった・・・間違い、ない・・・。


「やった~!」


油断しなければ、絶対大丈夫と言われてた悠や、国立大からキャリア官僚という、ちょっと次元の違う道を目指している加奈と違って、私はいつも低空飛行を続けて来た。それだけに、喜びもひとしお、一緒に抱き合って喜べる人がいないのが、ちょっと寂しかったけど、私は大きなガッツポーズを決めていた。


ひとしきり喜んだあと、私は携帯を取り出すと、まずはお母さんに歓喜の合格報告。ときたま、素っ頓狂なことを言ったりやったりするのが、タマにキズだけど、やっぱりここまで、私を大事に育ててくれた親に報告しなきゃね。


待ちかねたように、電話に出たお母さんは、私の報告に大いに喜んでくれた。


「じゃ、今夜はお祝いね。お父さんにもさっそく報告しなくちゃ。」


お母さんの弾んだ声が、私の心も一段と弾ませてくれた。電話を切ると、今度は悠にかける。お母さんとおんなじで、悠もすぐに電話に出る。


「もしもし、悠?やったよ、受かったよ。」


「本当に?おめでとう!やったね。」


「悠は?」


「私も受かってた!」


「よかった、おめでとう~!」


電話越しに、喜びを分かち合う私達。


「これから、先生に報告に行くよね?」


「行く行く。」


「じゃ、学校で待ち合わせしよ。」


「OK、じゃ、またあとでね。」


久しぶりに悠に会える、私はますます嬉しくなって、大学をあとにした。


始業式以来の高校に向かう間、私は難関大を軽く滑り止め合格して、今は国立の二次試験に向けて勉強中の加奈と、一足早く受験を終え、既に学校に復帰している聡志に、報告のメ-ルを打った。


加奈からはすぐ返信が来た。


『おめでとう!今、悠からも合格メールが来たよ。私もあと少しで終わるから、そしたら、いっぱい話、しようね!!』


『ありがとう、楽しみだね。加奈ももう一頑張り、よろしく!』


私はこう返した。授業中なのか、聡志からの返信は来ない。でもどうせ、学校で会えるし。