いろいろあった2学期も、もうすぐおしまい。クリスマスにお正月、世の中は賑やかだけど、私達受験生には、当然無縁のこと。センタ-試験までもう1ヵ月、完全に臨戦態勢だ。


「由夏、お先にね。」


「うん、また明日。」


この日の授業も終わり、私に声を掛けると、悠は先輩と仲睦まじく、教室を出て行く。これから予備校の自習室で、一緒に勉強だって。


「うらやましいなぁ。」


いつの間にか横にいた加奈が、そうつぶやく。一時ゴタゴタしたけど、今は3人組に戻れた私達。だけど、悠が別行動をとることが多くなってきたのは、仕方ないこと。先輩への想いはすっぱり諦めて、悠と仲直りした加奈だけど、やっぱり、ね・・・。


「恋が受験の邪魔って決めつけるのは、間違いかもね。」


「そうだね、人にもよるような気もするけど。」


「さぁ、私達も行くか。」


そんなことを言いながら、私達も教室を出た。


「そう言えば、由夏は塚原くんとは相変わらずだね。」


駅までの帰り道、加奈が突然そんなことを言い出した。


「相変わらずって、もともと私達はこんな感じだよ。そんなに話する仲じゃないし。」


聡志が電話で謝ってくれたことをみんな知らないから、また知らん顔状態に戻ってしまった私達を冷戦継続中と思っても無理はない。まぁ、確かに似たような状態だし。


「由夏と塚原くんが幼なじみって聞いて、みんな結構びっくりしてたけど、私はそうでもなかったなぁ。」


「えっ、どうして?」


「雰囲気・・・かな?」


「雰囲気?」


「そう。言葉でうまく説明するのは、ちょっと難しいんだけど、なんか2人、本当は仲いいんだろうなって思ってた。」


「どうして?そんなこと言われたことないし。」


加奈の言うことが意外で、私は思わず引き込まれるように、聞いてしまう。


「まず、お互い名前呼びじゃない。」


「でも、それは・・・。」


「うん、確かに小さい頃の友達ならみんな名前呼びかもしれないけどさ、でも大きくなっても、それを続けられるっていうのは、やっぱりそれなりの関係じゃないと。女子同士ならともかく、普通どうでもいい男子や嫌いな男子に名前呼び、それも呼び捨てにされたら、絶対に嫌だよ。」


「そう、かな・・・。」


「呼ばれて嫌だったら、由夏ならはっきり言うはずだよ。『あんた、いつまで馴れ馴れしく呼んでるのよ、止めてくれる?』って。」


ちょっと、加奈さん。私をどういう性格だと思ってるんですか?


「それに・・・。」


ここで加奈はいたずらっぽく笑った。


「あんなラブコメみたいなケンカをみんなの前で、堂々と出来るなんて、よっぽど仲いいか、よっぽど仲悪いかのどっちかだよ。」


「なっ・・・。」


この子、なんてこと言うの?私は慌てて反論する。


「じゃあ、私達はよっぽど仲悪いの方だよ。冗談じゃない、あんなデリカシ-なし男。」


「わかった、わかった。じゃ、そういうことにしとこうよ。」


「なに?その言い方。」


「だって、悠と違って、由夏は恋愛が受験にプラスになるタイプじゃなさそうだし、ね。」


「加奈!」


(いくら怒ったって、そんなに顔を赤らめてたら、説得力ないよ、由夏。)


加奈がそんなことを思っていたなんて、からかわれて加奈を思わず睨んでしまっていた私は、当然知る由もなかった・・・。