秋が去り、冬が来て、そして春が来て・・・最近の日本には四季がないと言われる。突然暑くなって、寒くなって、でも時はやっぱり流れて行く。


高校生になってから3度目の4月が来て、私達はいよいよ、高校生活最後の1年を迎えた。


そのひと月前、松本先輩が卒業して行った。高校最後の試合となった国体では、優勝は惜しくも逃したけど、2試合で4ホームラン。高校レベルでは突出した力を見せつけた先輩は、その直後のプロ野球のドラフト会議で、Gにドラフト1位指名された。


その日から、マスコミの寵児になった先輩は、卒業式でも大勢の取材陣のフラッシュを浴び、多くの女子生徒の歓声と涙に見送られて、去って行った。


もともと、遠くで見つめるのが、精一杯だったけど、先輩はもう手の届かない、別世界に飛び立って行ってしまった。


(さようなら、先輩。ご活躍をお祈りしてます。)


その他大勢の中の1人として、先輩の最後の制服姿を見送りながら、私は涙こそ出なかったけど、心の中に大きな穴が空いてしまったような、寂しさと虚しさを感じていた。


そして今、私は張り出されたクラス分け表の前にいる。私は昨年に引き続き、野球部の連中がゴーさんと呼ぶ山上剛造先生のA組。


「由夏。」


「悠、よかったね。イエィ!」


その横には3年連続で一緒のクラスになった悠、思わずハイタッチする私達。恋は一方的な片思いのままで終わっちゃったけど、でも悠がいてくれるお陰で、私の高校生活はとっても充実してる。また今年もよろしくね!


悠の名前を確認した後、改めてゆっくりクラスのメンバーを確認すると気になる名前がちらほら・・・。


「まさか先輩とクラスメイトになるとはなぁ。」


驚いたようにつぶやく悠。甲子園で負傷退場してから、ずっと休学という形で、姿を現さないままの白鳥先輩。同級生達は卒業してしまい、1人取り残された形の先輩が、今年私達のクラスメイトになった。


「山上先生つながりかな?先生、野球部の顧問だし。」


「かもね。」


「でも悠、ビッグチャンスじゃない。羨ましいなぁ。」


「何言ってんの。私なんかお呼びじゃないよ、でも先輩ともし、お話出来たら嬉しいなぁ。早く帰って来てくれるといいけど。」


ちょっと悠ちゃん、すっかり夢見る乙女の目になってますよ。


なんて、内心思わずツッコミを入れてしまった私だけど、実はちょっと動揺してるんだ。


だって見つけちゃったんだもん、クラス分け表にあいつの名前を・・・。