「ただ、    」



志穂ちゃんのお父さんは、私のお父さんの秘書で、家にもよく出入りしている人だ。

ちょうど同じ年の娘がいるからって紹介してもらって、それからしばらくして志穂ちゃんが私の通う小学校に転校してきて、以来ずっと一緒。

同じクラスが続くのは奇跡だと思っていたけど、そうか、裏で親が操作していたんだ。志穂ちゃんはずっと私のお守りをさせられていたってわけか。

そんなことを知るもせず、お気楽にもほどがあるな、私って。


「はぁ……」

「そんなに落ち込むなよ」

「落ち込んでないよ!」

「どう見ても凹んでるだろうよ」

「違うの、ショックなのは自分自身に、だよ」


この人は分かってくれるから大丈夫、とか。

この子は優しいからサポートしてくれるだろう、とか。

そういう自分本位な考えで処理して、結局は相手に無理をさせてしまう。

表情が分からない分、人一倍、相手の気持ちに敏感にならなくてはいけないのに、それが出来てないから嫌われちゃうんだ。


「この前ね、人の表情が分からないことに”慣れた”って言ったけど、時々、どうしようもないくらい不安になる時があって。強がってるけど、やっぱり人に嫌われるのは怖い……情けないよね」


どうして、こんな話を彼にしてるのだろう。

同情して欲しいわけでも、慰めて欲しいわけでも無いのに、何で?

そう思いながらも動き出した口は止まらない。