「ただ、    」



タイミングを見計らって教室に戻るつもりだったけど、予定変更。

壱哉の腕を掴んだまま、廊下を進む。

別にね、友達なんていてもいなくても平気だし、無理して一緒にいる必要なんてないでしょ。こっちから願い下げ。

だけど、だけど、志穂ちゃんだけは――。


「つまり、ショックだったわけだな」

「そうなのかな」

「いや、そうだろ」


人目に付かないところをひたすら探して、たどり着いたのは旧館にある音楽室だった。

ここは建て替え工事があった去年までは使われていたけど、今年度に入ってからは道具置き場になっていて、ほとんど誰も来ないらしい。

”らしい”というのは、ここに来るのは初めてだからだ。

しっかりと施錠されてあるドアの鍵は、壱哉が持っていた。

昼寝したいときに、よく忍び込んでいるんだって。


「壱哉は親友って呼べるような友達がいる?」

「俺は、」

「いなさそー」

「あんたに言われたくねぇーわ」

「私は志穂ちゃんだけだったんだ。小学生の頃からだから、勝手に大親友とか思ってたよ。でも、そっかー。親に言われてたんだ」

「知り合いって言ってたっけ?」

「うん」