「ただ、    」



壱哉は昨夜と同じように、私の脇腹をこしょばしてきた。

その手を塞ごうと伸ばした両手を取られて、引っ張り合いのような攻防を始める。

手加減しているのが分かる大きな手、吹き出すような笑い声、「痛て」「離して」「そっちこそ」「ばーか」子供みたいな言い合いに、さらに笑えてくる。

何やってんだかなぁ。

壱哉は今、どんな顔をして笑っているの?


「あーあ、あんたといると調子狂う」

「それはこっちのセリフ!」


こんなじゃれ合いみたいなこと、お淑やかキャラの私のすることじゃないし、お腹を抱えて笑うこともないし、ドキドキすることだって、目で追ってしまうことも。

全然、私らしくないんだよ。


「……さっきの、あのチャラい奴、誰?」


ふと、呟くように壱哉が聞いてきた。


「え、チャラいのって、もしかして博貴のこと?」

「ふーん、博貴っていうんだ」

「知らないの? 博貴って割と有名人……、あ、そうか壱哉はあんまり学校来ないから分かんないよね。幼馴染なんだ」

「幼馴染、ね」

「うん。博貴がどうかした?」

「いや、別に」


なんだ、そりゃ!

自分から聞いてきたくせに興味が無いといった様子で体を起こした壱哉は、んんっと大きく伸びをした。