女の子に囲まれた博貴は、じゃぁっと手を振りながら昇降口に入り、志穂ちゃんとすれ違いざま、彼女にも「おはよう」と挨拶をする。
モテる理由の1つに、彼自身が女の子大好きというのもある。
本当に、たらしなんだから。
と、心の中で悪態を吐きながらも、毎朝、私に友達がいる場所を教えてくれること、知っている。憎めなくて良い奴だ。
「志穂ちゃん、おはよう」
「おはよう、美波ちゃん。教室に行こう」
「うん」
聞き慣れた優しい声。
志穂ちゃんは、学校で唯一の友達で、私の病気を理解したうえで仲良くしてくれる。
大人しくて控えめだけれど、アニメが好きで声優を目指しているという女の子だ。
そんな志穂ちゃんが、教室に入るなり溜息を吐いた。
「今日、嫌だなぁ」
「どうして?」
「だって、私、運動苦手だから。またみんなの足を引っ張っちゃう」
「それをいうなら、私の方だよ」
今日は終日、球技大会だ。
種目はバスケ、バレー、サッカー、キックボールとあり、抽選の結果、私と志穂ちゃんはバスケに割り当てられた。
人の顔が認識できない私にとって、最も苦手なスポーツだ。
敵チームとネットを挟んでするバレーや、先攻後攻がはっきり分かれているキックボールならやりやすかったのになぁ。



