「この曲のタイトルなんだっけ?」
「……初恋」
「そうそう、これいいよなー」
イヤホンの片方を取り返すのも、自分が付けてる方を外すのも何だしなぁーと、そのまま一緒に聴く。
大貴くんもそうだけど、この博貴も距離感が子供の頃のまんまというか、男女の意識があまりなくて、多分、今でも平気で手を繋いで歩けると思う。
私があの家でグレずに病まずにいれたのは、この兄弟のお陰。
2人の傍は何だかんだ居心地がいいのだ。
「博貴くん! おはよう!」
「あ、また早坂さんと一緒にいるー。ずるいー」
「2人で何聴いてるの? 私にも聴かせてー」
もうすぐで学校に着くといったところで、数人の女の子たちが博貴の周りを囲んだ。
今日も相変わらず、モテるなぁ。
博貴はいわゆるイケメンって部類にいるらしく、人懐っこいし、気配りができる方だし、勉強もスポーツも常に1番の文武両道。
その上、お坊ちゃまなんで、持って生まれた気品もある。
黙ってても女の子が寄ってくるんだ。
私は大貴くんの方が100倍いいけど!
「あ、美波。あそこの角に立ってる子、志穂ちゃんだよ」
「三つ編みの子?」
「そうそう、じゃぁ俺、行くね」



