「ただ、    」



壱哉のバイトが始まるギリギリまで試験勉強するつもりだったけど、集中力の方が先に限界を迎えてしまい、ファミレスを出ることにした。

吐く息が白く残る寒さの中、手を繋いでライブハウスまで歩く。

クリスマスに向けてライトアップが始まった街は綺麗で、どこからか聞こえてきたラブソングに合わせ自然と鼻歌を歌ってしまい、壱哉がクスクス笑う。


「その曲、最近よく聴くな」

「TRUE BLUEの新曲だよ。私、結構好きなんだ」

「そうなの? 俺、ライブ行ったことあるよ」

「え、いいなぁ、チケットよく取れたね。かっこよかった?」

「うん、なんていうか熱かった」


熱い? あぁ、なるほど。

壱哉の表現は少々独特で、一瞬「ん?」となったけど、熱量のことを言っているんだと、すぐにピンときた。

カッコ良さとか、クオリティの高さとか、パフィーマンスとか、感動とか、そういうの全部ひっくるめてダイレクトに伝わる熱さ。

私も経験したことがあるよ、壱哉と初めて出会った時。


「壱哉はいつから楽器を始めたの? 何でもできるって聞いたけど」

「物心がつく頃かな。ほら、叔父さんがライブハウス経営者だって言っただろ?」

「行方不明の叔父さん」

「そうそう。その叔父さんのところにガキの頃からよく遊びに行っててさ、興味本位でギター持ってたりして。周りの大人が面白がって教えてくれるから、気が付いたら弾けるようになってたんだ」