北斗side

穂花が俺に異性として好意を持ってたなんて

知らなかったな

俺からしたら手のかかる妹みたいな存在だった

小さい頃の穂花は頼る人間が俺や奏しか居なくて

寂しいだろうと安心できる言葉を掛け続けた

それが穂花を勘違いさせることになったなら

申し訳ないと思う……

けど、穂花の気持ちに応える事は

これから先もずっと、きっぱり無いと言える

それが穂花を傷付けることになるとしてもだ

今回の事で大切な女を傷付けることになった

でも2度と泣かせたり傷付けたくねぇ

傍で笑ってくれるだけであったかくて

あの小さな身体を優しく包んでやりたいと

そう想えるのはこの世で詩1人だ

生まれて初めて、愛しいと想える特別な存在……

詩の存在があるだけで胸ん中があったかくて

嬉しい、楽しい、独占したい、離れたくない

考えるだけで気付けば口元が緩む

早い話が、詩が傍に居てくれたら

それだけで俺は幸せになるんだよな

そんで、過去を知って益々感じる

他の誰でもなく、俺がこの手で守りたいと思う

その為には穂花との事をきっちり片付けねぇとな

「穂花が俺を好きで居てくれるのは嬉しい。
けど、俺はその気持ちに応える事は出来ない。
俺にとって穂花は昔も今も、これから先も
妹みたいな存在であり続ける。
俺が唯一大切に守ってやりたいと思うのも
愛しいと感じるのも詩1人だ。
これを聞いて納得して貰えねぇなら
幼馴染としても距離を置く。
穂花には悪いが、お前の存在が詩を傷付けるなら
俺は容赦なくお前にも牙を剥く」

俺の言葉を受けた穂花は唇を噛んで俯いたまま……

膝の上で握られた拳は微かに震えているが

ここで落ち着かせようと手を重ねるのは違う

もう今までのようには出来ねぇんだ

これがもし詩であったなら

握りしめて抱きしめたいと思う

悲しみも苦しみも受け止めてやりたいと……

だが、詩ではない誰かにはしたいとは思わねぇ

「突き放すことになるのは分かってる。
けど、詩を大切に想う以上
穂花を受け入れるのは無理だ。
俺がこの手に抱き締めたいのはあいつだけだから」

俺の言葉を受けた穂花は目を真っ赤にして

唇を噛んだ

「……分かった。
私の気持ちは絶対に受け取って貰えないって
ことだよね?」

「あぁ」

涙を目に溜めて静かに頷いた穂花を見て

俺も、周りの奴らにも安堵の表情が浮かんだ