北斗side

電話してた時、泣いてたとは思えないくらいに

元気な穂花は総長室に来てからも

べったり張り付いて離れねぇ

「穂花、親父さんからまた殴られたんだろ?
傷の手当してやるから、見せてみろ」

するといきなり下を向いて話し出した

「一応ワタシも女の子だから、服の中は
見せられないよ…
たしか、さっきの部屋に女の子居たよね?
その子にお願い出来ないかな?」

俺の服の袖を引っ張って上目遣いで

頼み込む穂花

けど…

俺の電話を聞いて泣かせちまったんだよな…

なのに、その原因である穂花の手当てを

詩に頼むなんて出来るわけねぇよ

「詩は俺ら星竜の姫だし、俺の大切なヤツだから
手当ては奏にでもしてもらえ。
それと、この部屋は姫以外は本来なら
立ち入り禁止だから、寝泊まりするのは
下っ端の空き部屋だから。
まぁ、とにかく奏呼んでくるから」

そう言って立ち上がりかけた俺の腕に

しがみついて離れない穂花

「ワタシも北斗にとっては大切な人間でしょ?
小さい頃からワタシは北斗が好きなんだよ…
北斗もワタシの事好きだって言ってくれたじゃない。
両想いだと思ってたのに違うの?
守ってくれるって、ずっと一緒に居てくれるって
言ったじゃない!」

興奮する穂花の手を腕から離した

「それは幼馴染としての言葉であって
好きなヤツは詩だけだ。
守りたいと思うのもずっと一緒に居てやりたいと
思うのも詩、ただ1人だ。
だから穂花の気持ちには応えられない。
とにかく奏呼んでくるから」

困惑と悲しみを宿した目を向ける穂花を置いて

俺は部屋を出た

「許せない…ワタシの北斗を奪うなんて。
絶対に許さない…」

俺が部屋から出た後、穂花が呟く言葉に

俺は気付かなかった…

もしこの時気付いてたら

詩から笑顔を奪わずに済んだのに…