詩side

もしもの事を考えて文化祭を

早退する事になった私とみんなは

教室に1度戻ってきた

「詩!大丈夫?」

真っ先に私の名を呼び走って来たのは律だ

ノートに謝罪と感謝を込めて綴り

笑顔で見せた

≪心配かけてごめんね?
でも、もう大丈夫だよ!
文化祭放ったらかしになっちゃって。
念の為、今日は早退する事にしたの≫

読み終えた律は、ホッと一息ついて

頭を撫でてくれた

「友達なんだから心配するのは
当たり前でしょう?
でも元気になって良かったわ。
今は文化祭の事よりも
自分の事だけ考えなさい」

ありがとう、律!

こんな優しい律が私のお友達だなんて

私、幸せ者だよ!

ぎゅっと抱き着いて律に笑顔を見せる

優しい律に見送られながら

私と北斗達は倉庫へと向かった

倉庫に着いた私達を迎えてくれたのは

星竜のみんなだ

「「「お帰りなさい!!!」」」

倉庫には笑顔のみんなが居て

それだけで心が温かくなる

ただいまを込めて笑顔で

その輪に走りかけた私を抱き抱えた北斗

その瞬間、倉庫内はピシッと

固まってしまった

もちろん固まったのは空気もだけど

下っ端のみんなの顔だね

お帰りにただいまを言うのは

挨拶として当然だよね!

北斗に抱き上げられた私は頬を膨らませて

ジトーッと抗議の目を向ける

私は真剣に怒ってるのに

何故か北斗は笑顔で私を見て

とんでも発言を投下した

「本当可愛いな。
でも、そういうのは俺だけに見せろ」

なっ!?可愛い!?

こっちは真剣に怒ってるのに

意味不明な発言と無駄にキラキラした

笑顔で見つめるなんて…

きっと天然のタラシだね

でも、だけど!

イケメンは何をしても許されるなんて

私には通用しないんだからね!

ノートに≪挨拶は大事!≫と書いた

すると人が変わったように

みんなに挨拶を返してくれました

「ただいま」

下っ端のみんなは一瞬キョトンとした後

笑顔になった

北斗に続いて奏や錬、奈留と冬も

挨拶を返してくれて嬉しい!

っていうか、北斗以外はいつも

きちんと挨拶するんだけどね〜

みんなに笑顔で手を振って

幹部室へと到着した私達は

早速今日の出来事とこれからの対応について

話し合うことになった

シンとする空気の中、口火を切ったのは奏

それを私は定位置である北斗の

膝の上で聞く態勢に入る

「今日詩ちゃんの前に現れたのは
北星の総長、島田。
おおかた、星竜の視察を兼ねて
星姫になった詩ちゃんを見に来たんだと思うんだけど…」

シンと静まる中、声を上げたのは奈留だ

「でも不思議だよね〜。
視察とかってさ〜わざわざ総長自ら
するもんかなぁ?
そういうのは下の人間にさせない?」

「だよなー?俺もそれは考えたんだよな。
なんでわざわざ総長が現れたんだぁ?」

腕を組んで頭を傾げる錬

頭を悩ますみんなに

北斗の重低音の声で一言…

「星姫になった詩を総長自ら見に来た。
答えは1つ…星竜への宣戦布告だ。
近々抗争が起きる…
そうなればやる事は決まってる。
詩を守って必ず勝つこと」

北斗の言葉にみんなは頷いた

そこからは、いつ攻め込まれてもいいように

あらゆる想定を考えて作戦を練って

抗争へ向けて下っ端のみんなの

力の底上げや私の警護の強化について

話し合われた

そんな中、私はというと

こういう経験はゼロだから

話を聞いてもちんぷんかんぷんで

何も役に立ちそうにないなぁ…

みんなが頑張ってるのに

ただそれを眺めているだけなんて

なんだかムズムズしちゃう!

私に出来ることってないのかぁ

頭を悩ます私の頭に大きな手が

乗せられて視線を上げると

優しく見つめる瞳と目が合った

「俺らは詩が笑って傍に居てくれるだけで
頑張れるし、強くなれんだ。
けど、詩は違うんだろ?
だったら詩は詩でやりたいことを
やればいい。
ただ無事に終わるまでは少し自由が
制限されるし限度もあるが
縛り付けたくはねぇからな」

北斗…

私が何を思って考えてるかを

分かってくれてるんだね

ありがとう!

今自分に出来る精一杯のことをするね

みんなが私を守ってくれるやり方は

私には出来ないけど

私のやり方でみんなを支えられるように

頑張るからね!

北斗に笑顔で大きく頷いた