詩side

北斗の優しい声が聞こえる

「何か…思い出したのか?
俺が傍に居てやるから話してくれねぇか。
怖いならこうしててやる…
絶対守ってやるから」

腕の中から顔を見上げて北斗に

小さく頷いた

「もちろん、僕たちもここにいるからね。
無理に全部話さなくていいから…
言える範囲でね?」

そう言って穏やかに笑う奏

「そうだぞー!俺らみんな居てやるから!」

「そうそう!大丈夫だからね〜!」

「…無理は禁物」

錬…奈留…冬…

みんながついててくれるなら

話せるかな

あ、紙とペンあるかな?

ジェスチャーをすると奏が私の

相棒のノートとペンを渡してくれた

私はあの男の子の事を書いて見せた

≪うん、教室で接客してた時にね
廊下から視線を感じたから
目を向けたの。
そしたら、男の子が1人居て…
その子が私に笑ったの。
笑ってるのに笑ってないみたいな
すごく不気味な感じで…≫

「…男が1人か」

北斗の呟きが保健室に響いた

他のみんなも眉間に皺を寄せて

考えこんでる

「そいつが誰なのか詩は
知らないんだよな?」

北斗の問い掛けに頷いた

「奏は学校内の監視カメラのハッキングと
この辺で星竜を狙う可能性大の族を調べてくれ。
錬と奈留、冬は下っ端に連絡して
校内に不審な奴が居なかったか調べろ。
俺は詩を1人には出来ねぇから
ここで待機する。
何か分かり次第連絡してくれ」

「「「「了解!!!!」」」」

北斗の指示にそれぞれが動き出した

私が倒れたせいで迷惑掛けちゃって

すごく申し訳ないな…

肩を落とす私の耳に北斗の優しい声

「詩のせいじゃねぇから気にするな。
1人で抱え込むくらいなら
頼ってくれた方が俺らは嬉しいんだからな。
詩は1人じゃねぇ、星竜みんながついてる。
今はとにかく仲間を信じて待とうな」

うん、そうだね

私1人じゃないんだ…

みんながついててくれる

今はそれに頼らせて貰おう

北斗に笑顔で頷いた

保健室には北斗と奏と私だけが居て

静かな空間に奏のパソコンの

カタカタという音だけが響く

みんなが動き始めてから

どれ位の時間が経ったかは分からないけど

ひとつ思い出した

不気味な笑みばかり頭に浮かべてたけど

特徴も少しだけなら覚えてる

ノートに思い出した特徴を書いて北斗に

見せてみた

≪その子の特徴思い出したよ。
たしか、黒髪に眼鏡をかけてて目は
私と同じ青い色してた。
あと、紺色の学ラン着てたよ≫

「お手柄だ、詩。
これで探す範囲が絞れるかもしんねぇ。
奏、詩を見てた奴の特徴だ」

北斗から受け取ったノートに

目を通した奏は了解、と言って

みんなに連絡を取りながら

猛スピードでパソコンを操作し始める

す、すごい!

2つの事を同時進行させるなんて…

思わず奏に尊敬の眼差しを送りながら

拍手する私を見て奏は一瞬キョトンと

した後、唇に弧を描いて笑った

私から目線を外した奏の頬が

少し赤くなったのが気になったけど

私を抱き締める腕に力が入って

意識が奏から北斗に移った

さっきまで優しいオーラは消えて

今度は拗ねてる子供みたいに

プイとわたしから顔を背けるんだけど

視線はチラチラ私に送ってくる

北斗どうしたのかなぁ?

視線を合わせようと下から覗きこんで

首を傾げてみた

そしたら、次は片手で顔を隠すもんだから

私には何が何やら分からない

だけど隠しきれてない耳は真っ赤で

余計に私の頭の中はハテナだらけだ

う〜ん?

あ!もしかして私がずっと引っ付いてるから

暑くなってきたのかも!

≪北斗、私が引っ付いてるから
暑くなってきたんじゃない?
震えも止まってるし、離れるよ!≫

そう書いて見せると片手の指の間から

ノートに目を通した北斗は一言…

「嫌」

え?嫌って…

そしてさっきよりも少し強く

抱き締めて私を膝の上に乗せたまま

私の肩におでこを乗せた

ふふふ、なんだか子供みたい!

少し和んだ気持ちになった私の耳に

奏が一言呟いた

「北斗、分かったよ。
詩ちゃんが見た男は、最近伸び始めた
ナンバー3の族、北星(ほくせい)の総長…
名前は島田岳斗(しまだがくと)だよ」

「北星の島田か…」

何やら難しい顔で眉間に皺を寄せた

北斗に私は不安になったけど

そんな私に気付いたのか

見つめる瞳は優しくて温かい

いつもの北斗だ

「そんな不安そうな顔すんなよ。
大丈夫だから、俺らに任せとけ。
絶対に守ってやるから。
だから詩は笑っててくれな」

その言葉に私は笑顔で頷いた