北斗side

俺は全国ナンバー1暴走族"星竜"

15代目総長 流川北斗(るかわほくと)

一昨日、傘下からの帰り道

ある女と出逢った

普段、傘下で起きたことは

俺以外の人間が対処に回る

たまたま俺しかいなかったから

行っただけのことだ

傘下の帰り道、星竜の縄張りである

繁華街を見回ろうとしたのは

ただの気まぐれだっただけだ

路地裏の声が聞こえてきたのも

たまたまタイミングよくそこを

歩いていたからだ

全て偶然や気分、タイミングが

重なって出来た産物だ

それらが揃ったあの瞬間

金髪碧眼の女と出逢う事が出来た

キザな台詞を吐く趣味はないが

あれは…

“出逢うべくして出逢った”

俺にとっては…運命的な出逢い

周りに群がる女達に抱く感情は“無”

どんな女も全て同じだ

媚びを売る、もしくは怯えて遠ざかる

素顔を隠し偽りの仮面をつけて

俺達へと群がってくる

だけどあいつは…あいつだけは違った

助けようとした時も自分よりも

猫に意識を向けていたし

助け出した後も自身の身なりが

崩れている事よりも

猫の安否に安堵していた

俺を見ても怖がる素振りも一切なく

真っ直ぐ俺を見て笑顔を向けてきた

そして心からの感謝の言葉を

俺の手の平に残し

去って行った…

この出逢いを失くしたくないと

初めて思った

なかった事にはしたくない

一瞬の出逢いだったが

守りたい存在と認識した

そして情報に聡い、奏に頼んだ

名前も知らない女のことを…

そして今、目の前に無防備な姿で

猫のように丸まって爆睡してやがる

屋上のど真ん中で寝ている姿は

太陽の光を浴びてキラキラと輝いて見える

金髪のせいなのか、それとも…

こいつ、星川詩自身から

放たれている雰囲気なのか

まるで天使のようだ

起こすのは可哀想だと言う奏の言葉に

起きるまで待とうとしたが

一向に起きる気配がない

4月とはいえまだ少し肌寒い季節だ

風邪を引かせたくない

俺以外に声を掛け、目覚めさせたが…

それは失敗だったと気付いた

起き抜けの無防備な姿

あいつらに向ける柔らかな雰囲気と笑顔

兎に角、仕草全てが

いちいち可愛すぎるんだよ!

心の中で1人ツッコミを入れていると

突然俺を指差し首を傾げた

何度もその仕草を繰り返して

アイツらの反応がないことに

痺れを切らしたのか

俺に向かって真っ直ぐ歩いてきた

…ってか、あの時も感じたが

コイツ、めちゃくちゃ可愛い

なにより…身長も顔も手も足も

全てがちっこ過ぎる

ってか俺がデカイだけなのか?

185センチはデカイのか…いや

コイツがちっこ過ぎなんだ

そんでもって細い、細すぎる

軽く握ったら折れちまうんじゃねーの

…つーか、めちゃくちゃ見られてるぞ

デカイくりくりの目で穴が開くほどに!

と思ったら突然後ろを振り返り

やっと動き出したアイツらを見て

笑ってやがる

クソ可愛いな…

1番近くにいる錬の袖を引っ張って

俺を指差し首を傾げた

ん?そういえばコイツこないだも今日も

一言も口開いてなくねぇか?

頭の中に?マークが浮かぶ俺

そしたら突然錬が俺の説明をし始めた

「俺らの仲間の1人で
流川北斗(るかわほくと)だ。
ちなみに詩と同じクラスだぞ!

昨日は屋上でサボってたから
いなかったけどな!」

納得したのか大きく頷いている

そして笑顔でお辞儀した

すると突然コイツ…詩は慌て始めた

携帯の画面を錬に見せ引っ張って…

一体何がしたいんだ?

全く反応を示さない俺達に

何故か肩を落とした詩…

ってか…

おい、誰かこの状況を説明しろよ!

そんな俺を置いてけぼりにして

話を進める奏

俺、一応総長なんだが…

「詩ちゃん、授業に遅れるから
早く行こうって言ってるんだよね?」

そう問い掛ける奏に大きく頷いた、詩

「それが伝わってない、伝わらないから
どうしよう?って思ってるんだよね?」

また大きく2度頷いた

頭を撫でた奏が気になる一言…

「ちゃんと僕らには伝わってるから
安心してね?」

伝わってるとか伝わってないとか

一体何の話をしてんだよ!

その一言に安心したように

ホッと一息ついた詩は

次の瞬間、眉をひそめた

「なぜ行かないのかが
分からないんだよね?」

今度は奈留だ

奈留に頷いている詩

「答えは簡単だよ〜!自習だから!
そして…僕らから詩ちゃんにと〜っても
大切なお話とお願いがあるから
ここに居て欲しいの!」

声高らかに宣言した奈留を見て

頭に?飛んでいるであろう詩は

キョトンとしたまま首を傾げた

さぁ、やっと俺の出番

詩…俺はお前を姫にする