伝説に散った龍Ⅰ






俺たちのリルハが、俺たちのリルハじゃなくなる、だなんて、
そんなこと



ーー考えたくもなかったのに、だ。



「ねえ、柚。
あたし、ね



…好きな人、できたんだ。」



顔をほんのり赤く染めながらそう言うリルハに、
絶望感を覚えたのは、



今考えてもその時が初めてだったと思う。



その日から毎日、
毎日のようにリルハから「好きな人」について相談を受けた。



日に日に増えていく、
心の中にかかった靄がなんなのかも、
それさえも分からないまま



…ずっと。




どうして桃には相談しないのか、
そんなの、



考えればすぐにでも分かったはずなのに。



バカだ、



究極に、間抜けだ。



その時は、そう
「桃よりも、俺の方が頼りになるから」



そんなことしか考えられなくて。