伝説に散った龍Ⅰ






私は、泣きじゃくる柚の肩を抱き、ある場所へと足を進めた。



アンティーク調の深緑のドア。
金色のノブ、金のプレート。



そこには、「Bar rainy」の文字。



カランコロン。



心地よいリズムを刻むベルの音も、耳に流れ込むクラシックの音楽も。



…何も変わらない、あの頃のまま。



「いらっしゃい…………って、芹那!?
…と、柚じゃん。どーしたの」



「こんにちは、っていうより、こんばんはだね。………久しぶり、氷雨-ヒサメ-さん。」



氷雨さんは、お母さんのお兄ちゃん。



私の、伯父さんだ。



氷雨さんには「芹」時代もお世話になっていたから、私的に氷雨さんには絶対的な信頼を寄せている。



ついでに言えば、柚のことも知ったような雰囲気だった氷雨さん。



詳しくは分からないが、
黒龍の関係者、と言ったところか。



「芹那、突然だな。
、今までどこにいた?
…世那から聞いた。



姉ちゃんたちの家から芹那がいなくなった、って。



心配したんだぞ、俺も、世那も。」