伝説に散った龍Ⅰ






考えているうちに、涙が止まらなくなって。



制服のセーターに、涙がいくつもシミを作った。



普段なら、涙を流すのは嫌だけれど。



芹那ちゃんの、芹那ちゃんのための涙だって言うなら、



私は、
ーー喜んで大粒の涙だって流せる。



芹那ちゃんがそれくらい好きなんだって、



大切なんだって。



「芹那ちゃん!」
ようやく見えてきた彼女の背中に、声をはりあげる。



「伊織!?大丈夫?…あいつら置いてきたの?」語りかけるような優しい声。



思わず涙腺が緩んでしまうんだ。



一番辛いのはきっと自分だろうに、いっつも優先するのは私のこと。



「…芹那ちゃん、ごめんね。私は、芹那ちゃんのこと、信じてるよっ…?だからね、泣かないでよ。



いつもみたいに、笑っててほしいの…芹那ちゃんには」



その時の私は、どんな顔をしていただろう。



そうとさえ思ってしまったのは、
あまりにも芹那ちゃんの表情が、
朧気に歪んでいたから。