「もう昼休みだよ」
「…」
「てことで円堂さん。借りるね?」
「は?」
「だって。約束したし。うんって言ったし、その子」
「私が頷くわけないでしょ」
「ええ」
「あんた自分の立場わかってんの?」
「分かってる分かってる。ほら、伊織ちゃん行くよ」
「…頭沸いてんじゃないの」
伊織、教室戻るよ。
そう言って、帰路に立ち塞がる咲良を押し退ける手に力を込める。
しかし
いつまで経っても、私に『うん』という返事は届かなかった。
「ちょ、伊織あんた何して」
私の制止に無視を決め込む伊織は
自らその足を咲良へと向ける。
こうなることが、完全に予測できていなかったわけではないけれど。
まあ止めればいいやと楽観視していた私は
救いようのない馬鹿だった。
「芹那ちゃん。お留守番をお願いしたいです」
「…伊織、」
「さっき連絡あったから、もうすぐ皆来ると思う」
「待って伊織、」
「自己紹介して待っててよ。仲良くなって欲しいの」
「…馬鹿」
「すぐ戻るから」
目を逸らすことが出来なかった。
その真剣な瞳から。
どうしても、頷くしかなかった。
「…なるべく早く戻って」
「うん」
「じゃなきゃ殴るから」
「…怖いから早く戻るよ」
「…ダメならダメって言うのよ」
「うん」
「……わかったよ」
だから私も返す。
真剣な言葉を。



