それに、伊織になにかあったとしても、私が彼女の盾になろう。
それくらいの覚悟はある。とうの昔から。
伊織の平穏は、私の命に代えてでも守られることに決まっている。
「ーーあっ、そう言えば芹那ちゃんに言うの忘れてたような気が」
「何を」
「言ったっけ、私」
「なんだろ、わかんない」
「『皆』が転校してくるって」
「…へ」
「私も昨日まで知らなかったんだけどね、なんか急に決まったんだって」
『皆が転校してくる』と
あっけらかんとそう言い放った伊織を凝視する。
その『皆』がどの『皆』を指すのか
直接の言葉でなくとも予想できてしまう自分がいっそう腹立たしかった。
「『皆』って」
「爽たち!」
「爽、たち…」
「『黒龍』の皆だよ」
「、」
『黒龍』の二文字が伊織の口から出たことで、
やっぱりなと私は落胆する。
ーーやっぱり。彼奴等だった。
実は、伊織に彼氏ができたと、その彼氏が『不良』なんだと聞いたあの日
伊織に悪いと思いながら
それでもその名前にどうしても聞き覚えがあって調べておいた。
ーー近藤 爽。
十年前、わずか半年で関東地区の不良たちをまとめ上げた伝説の暴走族『帝』初代総長、近藤 響の弟にして、現在県No.1勢力を誇る暴走族チーム『黒龍』の副総長。
なんとも厄介なやつを捕まえたものだ。伊織。
未だ県外に進出しないためにその実力は未知数だと言われているが
今、この日本でも指折りのチームだと言われている黒龍。
つまり、『彼』は日本で最も危ない男たちの一人だと言うわけだ。
「…ごめんね」
「へ?何が?」
ごめん、伊織。
私
歓迎、できないかもしれない。



