「ありがとう。お店決まったら、待ち合わせ場所を指定してくれる?」


「分かりま……え?…」


手帳から取り出した付箋を差し出される。

そこに記されていたものはーー



「バイト先の親御さんにすぐ渡せるように準備してるんだ」


用意周到で素晴らしいで…じゃなくて!


先輩が手すりを掴む私の右手に付箋を貼り付けてくれた。


綺麗な字で、

電話番号とメールアドレスが記されていた。



「連絡待ってるね」


「あ、はい!」


やったよ、雅美…。
先輩から連絡先を教えてくれて、
その上、"連絡待ってるね"だって。



小説に視線を戻した先輩の横顔を見て、にやけてしまう。


ああ、恋する乙女ってこんな感じなんだね。


今、私の心臓は悲鳴を上げる一歩手前だ。