放課後、ホームルーム終了後に3年の教室に駆け込んだ。


「黒瀬先輩!」


入口から叫び、

バッグに教科書を詰め込んでいた黒瀬先輩の横顔を見つめる。


お願い、こっちを向いて。



「黒瀬先輩!」


ゆっくりとこちらを向いた黒瀬先輩はバッグを肩に掛け、私を見た。



「一緒に帰りませんか?」


一歩前へ踏み出す。

しかし、



「迷惑だから」


目を合わすことなく私の横を通り過ぎた。


冷めた目だ。



「待って!」



諦めない。


廊下に出て、叫ぶ。



「黒瀬先輩!」



諦めちゃダメだ、絶対に。



「黒瀬先輩、好きです!」




廊下を静かに歩いていく彼はもう、"ありがとう"
とは返してくれなかった。