「日菜子は蒼が送ってくし、この時間だから有紗は俺が送ってく」

改札を抜けようとするのを、腕を引いて止める。

「大丈夫だよ!今から電車に乗るって連絡入れれば、車でお姉ちゃんが迎えに来てくれるから」

送る必要のないことを伝えたのに、要くんは手を離してくれない。

「俺がもう少し有紗と二人で居たいから、送らせてほしい」

今日一番の要くんからのストレートな言葉に、私は息を詰めて押し黙ってしまった……。
要くんも、少しばかり恥ずかしそう。
それでも、ここは譲りたくないのか手は離れないまま。

私は握られた手に落としていた視線を上げて、要くんと視線を合わせる。

「ありがとう。それじゃあ手間になっちゃうけど、お願いします」

なかなか普段こんな時間に出歩かないし、電車も乗らないので、私は要くんに甘える事にした。

「うん。でもって、俺の言ってる意味分かってる?」

その言葉に、ん?と首を傾げれば

「わざとなのか、天然なのか…。もう少し俺の発言がどんな気持ちから来るか考えてみて」

そう言われつつ、手を繋いだまま私達は日菜子と蒼くんと別れて改札を抜けて私の自宅最寄り駅へと戻るべく、電車が来るのを二人で待った。

その間ぐるぐる巡ったのは、要くんの言葉の意味だった。