「日菜子が断ってくれてたんだけど、引いてくれなくて困ってたの。ふたりが戻ってきてくれて良かったよ」
私がニッコリ笑って言えば、ふたりも笑ってホッとしたような顔をした。
「まったく、私が蒼と付き合ってるのはかなり有名だと思うのに」
ため息つきつつ、日菜子が言うのを蒼くんと要くんも聞いて苦笑いだ。
「それに、有紗は今要がアプローチ中で離さないってのも噂になってるのにね。チャレンジャーな下級生達だったわ」
実にサラッと言われたが、私はとある所を聞いて目を丸くしてしまう。
何か今すごいこと言ってたような……。
「要くんが誰にアプローチ中なのが噂になってるの?」
私の問いに、日菜子と蒼くんがいい笑顔で答えてくれた。
「もちろん。要が、有紗に、アプローチ中なのは三年生の間では共通認識よ」
「下級生にもだいぶ噂はまわってるはずなんだけどな」
ね!なんて顔を見合わせつつ仲良く言うカップルのふたりに、私は口ポカーンの間抜けな顔になってしまう。
そんな私にトドメのように要くんは言った。
「まぁ、俺も好意は隠してないしな。アプローチしてるし、外野から狙ってくる奴には牽制もしてる」
そんなの、気づいてなかったよ!?
驚く私の顔を見て、三人はそれぞれに笑いながらも日菜子が一言で締めくくった。
「有紗はその辺鈍いから、気づかなくても仕方ないね!でもそろそろ要が不憫だから気にかけてやってよ」
こうして、少しの波乱を起こしつつプレ文化祭を過ごしたのだった。



