四階の家庭科室から三階の三年生の教室の並ぶフロアへ移動すべく階段を降りていた矢先、私はクラっと一瞬歪んだ視界から足を踏み外して階段の真ん中辺りから落ちていく。

まずいと思って腕を手すりに伸ばすも届かない。
身体が反転して背中から落ちていく。

「有紗!!」

私を呼ぶ声がして、ドン!とぶつかった先は床ではなかった。

「っって、大丈夫か!どっか打ってないか?!」

私がぶつかった先、それは要くんだった。
なんでここに居るの?そう思いつつも、ビックリして固まってしまう。

「有紗!有紗!どっか痛いのか?!保健室か!」

そう言うなり今度は抱きかかえられそうになり、慌てて声を出した。

「ごめん!大丈夫!ビックリしすぎてただけで、痛い所はないよ。それより、私がぶつかっちゃった要くんは大丈夫?」

勢い込んで聞いてきた私に、大きく息を吐いて要くんがギューって抱きしめてくる。

「もうすぐ喫茶店の方の当番だから、迎えに行こうと向かってたら階段から有紗が落ちてくるところで。本当にびっくりした……」

私を抱きしめるその手は、微かに震えていた。

「間に合ってよかった。有紗、今日はこれからは一緒に行動するから!」

その言葉には強い意志と力があって、私はうなずいて答えるしかなかった。