「だから、莉乃と付き合わなかったんだよ。
お前、絶対本気じゃなかっただろ。
相川先生を好きだった頃の莉乃見てたからわかってんだよ、こっちは。
多分、無意識のうちに相川先生のこと忘れたくてそうなったんだろうなとは思うけど。」
どうやら私以上に私のことを知ってくれている晴人先輩。
「でも、まあ……」
その時、晴人先輩が立ち止まった。
だから私も立ち止まる。
「莉乃が俺のことだんだん好きになっていく様子は見てて楽しかったけどな。」
晴人先輩は意地悪そうな、どこか楽しげに笑っていて。
胸がドキッと高鳴る。
「それは……そうですね。
どんどん晴人先輩に惹かれていって……
いつしか相川先生のこと、完全に吹っ切れてました。」
「……実はさっき少し不安だった。
まだ相川先生見たら、莉乃揺れるんじゃないかって。」
「そ、そんなことありえません!
だってもう私は晴人先輩でいっぱいなんですから…!」
「……ん、だから安心した。
さっきの莉乃とか今の莉乃見て。」
そう言うと、晴人先輩はそっと私を包み込んだ。
優しくて、だけどどこかきつい。
そんな抱きしめ方。