『……行くぞ。』
『え…あ……』
戸惑う私の腕を無理矢理引っ張って、その男子と外に出た。
『莉乃ってタイミング悪すぎだろ。』
……あ、一つ思い出した。
私、その男子に莉乃って呼ばれてた。
下の名前で。
だから私も下の名前で男子のことを呼んでた気がする。
思い出しそうで思い出せないのが本当にじれったい。
『う、うう……』
そんな男子の言葉に対して何も返すことができず、ただひたすら泣いていた。
泣く私を男子は……
優しく抱きしめてくれた。
それからしばらくの間泣き続けて、ずっと抱きしめてくれていた。
泣き止んでから、男子にお別れの挨拶をして。
そして私は相川先生のことを諦めると決めて、家に帰ったんだ。
……あ、確か男子と別れる時……
『またな。すぐ会えるだろうから。』
って意味深なことを告げられた気がする。
それで結局は今もまだ、その男子と会えていないんだけど……。