はつ恋の君をさがしてる

「平原先生!状況を説明しろ!患者さんは知り合いなのか?」

ベテラン救命医の篠原先生が冷静に俺に問いかけてくる。

俺は救急車のストレッチャーから、病院のストレッチャーに鈴加を乗せ代えるのを手伝いながら、返事を返す。

「名前は澤田鈴加。23歳。俺の婚約者で一緒に暮らしてます。電話で助けてくれって言われて、帰ったらキッチンで倒れてました。血が苦手なんで、グラスで手を切って出血したのを見て、パニックになって過呼吸起こしたんだと思います。俺が見付けた時には呼吸は何とかできてました。」

「ヒューヒュー♪まさかの婚約者とはな!まぁいいか。よし!取りあえず生食!バイタル確認!血液検査は一通り急げ!!平原先生はどうする?見た感じ血管縫合が必要だが、ナートやるか?」

的確に指示を飛ばした篠原先生が、俺に向き直る。

俺は考えるまでもなかった。

「やります!やらせてください!」

「よし!じゃぁここでさくっとやるぞ!ナートの用意してくれ。念のためだ輸血も用意してくれよ?」

テキパキと準備が進んでいく。
鈴加は相変わらず気を失ったままだが、今はその方が都合が良い。

俺は細心の注意を払って、慎重に鈴加の傷を縫合していく。
篠原先生の指導もあり、少々慎重になりすぎて時間はかかったが、血管縫合も上手くできた筈だ。

出血が多かったので輸血もしたおかげで、鈴加を病室に移す頃には顔色 もかなり良くなっていた。

「よぉ!鈴加ちゃんは落ち着いたか?」

ガラッと病室の引き戸を開けて相良が入ってくる。

「相良か、さっきは助かった。」

マンションで救急隊を案内してくれたことに素直に礼を言う。

「あぁ気にしなくて良い。ついでに高嶺んとこのキッチンも片付けてきた。また鈴加ちゃんが見て倒れても困るし。うちの嫁も心配して手伝ってくれたから、鈴加ちゃんのお見舞いくらいは許してくれよ?」

「そうだな。鈴加に聞いとく。本当にありがとう。」

「おぅ!にしても随分ざっくりやっちゃったんだね~うちの嫁が洗ってるときにヒビが入ってたのが割れたのかも?って……前にうちのも湯飲みで指切ってるから。鈴加ちゃんも災難だったね。」

「多分そうだろうな……。俺に電話してきたんだ。助けてって……」

眠る鈴加を眺めながら、俺は本当に良かったと思った。
相良も同じ気持ちだったようで。

「本当に良かったな。誰も気が付かなかったらヤバかったよな?鈴加ちゃん頑張ったよ。」

俺もそう思う。
よく頑張ったよ、目を覚ましたら褒めてやらないと。