夜間の救急救命センターが今夜の俺の職場だ。
月に何度か回ってくる輪番制の当番医として、ひっきりなしに運ばてくる患者達に対応していくこの仕事は、若手にとっては勉強の場でもあるので、必然的に当たる回数も多いが、救命を専門としている医師達には敵わない。
毎回自分の未熟さを感じて情けなくなる時間でもある。
珍しく今夜はいつもよりも静かで落ち着いていた。
俺は馴染みの看護師に勧められて、少し早い休憩に入ろうと、個室の休憩室に向かって薄暗い廊下を歩いているところだった。
不意に誰かに呼ばれている気がした。
その声を追いかけるように休憩室に飛び込むと、デスクに置きっぱなしだったスマホがバイブで震えているのが見えた。
俺は咄嗟に手を伸ばし、電話の相手が鈴加だと言うことを確認する。
すぐにタップして通話に切り替えると、ゼェゼェと苦しそうな息遣いが聞こえてくる。
鈴加?と呼びかける俺に、小さな声で鈴加が助けてと答える。
俺は次の瞬間には休憩室を飛び出していた。
初療室とも呼ばれる処置室で雑談している馴染みの看護師に、すぐに救急車を俺の家に!とだけ叫んで病院から走り出た。
そのまま一目散にマンションを目指して走る。
半袖のスクラブに白衣を引っ掛けただけの格好で走る俺は、かなり異様だと思うが構ってなど居られない。
鈴加が俺を呼んでいる。
俺に助けを求めているんだ!
飛び込むように入ったマンションのロビーでは、コンシェルジュが驚いているが、俺はすぐに救急車が来るはずだから来たら部屋に案内して欲しいと説明し、開いたエレベーターに乗り込んだ。
玄関ドアを開ける指紋認証にイライラしながら、かちゃんと鍵が開くなりドアを開けて部屋に飛び込む。
「鈴加!鈴加!どこだ?どこにいる!?」
一直線にリビングに入り、視線をせわしなく動かすと、視界の隅に赤い血溜まりが映りこんだ。
俺は慌てて振り返る。
そこに鈴加が居た。
ダイニングテーブルの足下で、鈴加が倒れ込んでいるのを見つけた俺は、駆け寄ると先ずざっと身体を確認する。
落ち着け。大丈夫だ。
鈴加は俺が助ける。
呼吸は浅いが止まっている訳じゃない。
床に広がる血溜まりにはヒヤリとしたが、キッチンのシンクから溢れ出た水も混じっている事に気が付く。
俺は立ち上がって出しっぱなしの蛇口を閉めると、引出しから清潔なタオルを何枚か取り出す。
その際にシンクに欠けたグラスが沈んでいるのを見つける。
「これか……ケガしてパニックになって過呼吸起こしたんだな?」
出血し続ける鈴加の右手を掴むと、タオルを当ててギュッと押さえ込む。
元々貧血な鈴加の顔色は真っ青を通り越して白くなっている。
「マズイな……静脈いってるか?」
なかなか止まらない出血に、最悪の事態を予想して焦る。
圧迫止血しながらも鈴加の呼吸は確認を怠らない。
少しずつだが呼吸は落ち着きを見せている。
だが今度は失血で体温が低下したのだろうか?
ブルブルと震え始めた。
「高嶺!どこだ!?救急隊連れてきたぞ!」
頼もしく騒がしい友の声にほっとする。
「こっちだ!急いでくれ!!」
リビングに飛び込んできた友の手も借りて、救急隊員達と手早く鈴加をストレッチャーに乗せる。
エレベーターの扉はコンシェルジュの男性が開けてくれていた。
そうして鈴加はすぐに神城総合病院の救急救命センターに運び込まれたのだった。
月に何度か回ってくる輪番制の当番医として、ひっきりなしに運ばてくる患者達に対応していくこの仕事は、若手にとっては勉強の場でもあるので、必然的に当たる回数も多いが、救命を専門としている医師達には敵わない。
毎回自分の未熟さを感じて情けなくなる時間でもある。
珍しく今夜はいつもよりも静かで落ち着いていた。
俺は馴染みの看護師に勧められて、少し早い休憩に入ろうと、個室の休憩室に向かって薄暗い廊下を歩いているところだった。
不意に誰かに呼ばれている気がした。
その声を追いかけるように休憩室に飛び込むと、デスクに置きっぱなしだったスマホがバイブで震えているのが見えた。
俺は咄嗟に手を伸ばし、電話の相手が鈴加だと言うことを確認する。
すぐにタップして通話に切り替えると、ゼェゼェと苦しそうな息遣いが聞こえてくる。
鈴加?と呼びかける俺に、小さな声で鈴加が助けてと答える。
俺は次の瞬間には休憩室を飛び出していた。
初療室とも呼ばれる処置室で雑談している馴染みの看護師に、すぐに救急車を俺の家に!とだけ叫んで病院から走り出た。
そのまま一目散にマンションを目指して走る。
半袖のスクラブに白衣を引っ掛けただけの格好で走る俺は、かなり異様だと思うが構ってなど居られない。
鈴加が俺を呼んでいる。
俺に助けを求めているんだ!
飛び込むように入ったマンションのロビーでは、コンシェルジュが驚いているが、俺はすぐに救急車が来るはずだから来たら部屋に案内して欲しいと説明し、開いたエレベーターに乗り込んだ。
玄関ドアを開ける指紋認証にイライラしながら、かちゃんと鍵が開くなりドアを開けて部屋に飛び込む。
「鈴加!鈴加!どこだ?どこにいる!?」
一直線にリビングに入り、視線をせわしなく動かすと、視界の隅に赤い血溜まりが映りこんだ。
俺は慌てて振り返る。
そこに鈴加が居た。
ダイニングテーブルの足下で、鈴加が倒れ込んでいるのを見つけた俺は、駆け寄ると先ずざっと身体を確認する。
落ち着け。大丈夫だ。
鈴加は俺が助ける。
呼吸は浅いが止まっている訳じゃない。
床に広がる血溜まりにはヒヤリとしたが、キッチンのシンクから溢れ出た水も混じっている事に気が付く。
俺は立ち上がって出しっぱなしの蛇口を閉めると、引出しから清潔なタオルを何枚か取り出す。
その際にシンクに欠けたグラスが沈んでいるのを見つける。
「これか……ケガしてパニックになって過呼吸起こしたんだな?」
出血し続ける鈴加の右手を掴むと、タオルを当ててギュッと押さえ込む。
元々貧血な鈴加の顔色は真っ青を通り越して白くなっている。
「マズイな……静脈いってるか?」
なかなか止まらない出血に、最悪の事態を予想して焦る。
圧迫止血しながらも鈴加の呼吸は確認を怠らない。
少しずつだが呼吸は落ち着きを見せている。
だが今度は失血で体温が低下したのだろうか?
ブルブルと震え始めた。
「高嶺!どこだ!?救急隊連れてきたぞ!」
頼もしく騒がしい友の声にほっとする。
「こっちだ!急いでくれ!!」
リビングに飛び込んできた友の手も借りて、救急隊員達と手早く鈴加をストレッチャーに乗せる。
エレベーターの扉はコンシェルジュの男性が開けてくれていた。
そうして鈴加はすぐに神城総合病院の救急救命センターに運び込まれたのだった。
