はつ恋の君をさがしてる

これは夢?
夢を見ているんだよね?

目の前にあるのはまだ真新しい狛犬の石像。

その背中に小学生くらいの男の子がよじ登り、嬉しそうに誇らしげに手を振っている。

けれどこの後に何が起きるのか。

私は知っている。

それはまるでスローモーションのように、何度も私の夢の中で繰り返される景色。

男の子を引きずり降ろそうと、彼より少し背の高い少年が手を伸ばす。

ダメ!
逃げなきゃ!!

分かっているのに身体が動かない。

少年に抵抗した男の子の足が空を蹴り、次の瞬間には固定されていなかった狛犬を蹴りつける。

そして狛犬がゆっくりと傾いで……
気付くと私は痛みに泣き喚きながら暴れることしかできなくなっていて、私の身体の上には重い狛犬が乗り上げている。

左腕が自分のものとは思えない方向にグニャリと曲がり、地面が真っ赤に染まって、血溜まりが雨上がりの水溜まりみたいで…。

すぐ近くで男の子が何度も「ごめんなさい」と呟く声がする。

夢はいつもここで終わり。
もうすぐ終わる。
終わるはずだよね?

えっ?なんで?

なんで終わらないの?

少年が叫んでる?

「助けて!助けて!すずちゃんが死んじゃう!!」

少年は叫びながら走っていく。
その先にはおじいちゃんの家がある。
きっとそこにパパがいる。
パパなら私を助けてくれる。

痛いのも、辛いのも、苦しいのも。
いつだってパパならあっという間に治してくれる。

パパはすずの魔法使いだもん。

優しくて格好いいお医者さんだから、この痛いのもすぐに治してくれるよね?

夢だと分かっているのに、私の思考は小さな子どもに戻ってしまう。

しばらくするとドタドタと大人達が走り寄る足音がする。

あっという間に大人達に囲まれて、男の子も少年も引き剥がされるように連れていかれるのが見える。

イヤだ、イヤだ!と叫んでいるのが、どんどん遠ざかっていく……。

「鈴加!鈴加!動くな!頼むから……。」

痛みで手足をバタつかせて暴れる私を、パパとおじいちゃんが押さえ付ける。

どうして?痛いの!なんで?

それでも暴れる私に、パパが怖い顔をする。

けれど、その目からは涙が今にもこぼれ落ちそうで……

夢は今度こそおしまい。

私は真っ暗な奈落に引き込まれていく……。