はつ恋の君をさがしてる

「いっ!痛い……やだ、やっちゃった。」

一人での夕食を簡単に済ませて、使った食器を洗っている最中だった。

引っ越しの時に持ってきた安物のガラスのグラスを洗おうと、スポンジに捻りをきかせてキュッとグラスの内側で手を動かした瞬間に、パキッと小さな音を立ててコップが砕けたのだ。

勢いがついていた右手は止められず、はっとした時にはもう遅かった。

グサッと音が聞こえた気がする位の勢いで、私の右手にグラスの欠けた断面が深く刺さっていた。

慌てた私は、焦って欠けたグラスを右手から引き抜いてしまう。

途端に襲ってきた痛みと、手の平から滴る赤い血にパニックを起こす。

呼吸が自分でも制御できなくなっていく。

ハクハクと必死に息を吸うのに、苦しくて堪らない。

過呼吸を起こしているのが自分でも分かるのに、どうしたらいいのかが分からない。

目の前がどんどん真っ赤に染まり、立っていることができなくて、床に踞る。

「ひっ、ひっ、助け…て……高嶺さん……」

ダメだ。
今ここに高嶺さんは居ない……。

このまま気を失うわけにはいかない!

私は苦しみながらも必死に這いずってダイニングテーブルに手をかける。

テーブルの上には携帯電話がある。
それで誰かに連絡を……助けを呼ばなくちゃ……。

薄れる意識の中で、手にした携帯をタップする。

「はい。どうしたんだ?こんな時間に……何かあったのか鈴加?」

耳に聞こえてきたのは、そばに居て欲しいと願った高嶺さんの声。

「助け…て……苦し…い…の……。たか…ねさ…ん」

高嶺さんの声にほっとした私は、今度こそ意識を手放し、キッチンの床にドサリと倒れ込んだ。

電話の向こうからは高嶺さんが私の名前を叫ぶ声がしていたが、私には応えられなかった……。