はつ恋の君をさがしてる

ガチャンと玄関の鍵がかかる音を聞いてからゆっくりと起き上がる。
そしてそのまま頭を抱えた……。

「行ったか?何やってだよ……俺は……」

今朝起きた時に腕に抱えているのが眠ってる鈴加だと知って驚愕した。
ソファーで朝まで眠ってたことにも気が付かなかった。

知らない間に掛けられていた毛布に微かに残る鈴加のぬくもりを感じてにやけてしまう。

「可愛かったなぁ~やわらかくて、あたたかくて……」

その感触を思い出しながら二度寝に突入するべくまたソファーに寝転がった。

俺はやっぱり……いや、間違いなく惚れてる。

あいつもそうだと良いんだが。
どうしてもまだ確信がもてなかった。

今日は午後から出勤して、あすの夕方までの勤務だ。
鈴加に会えない時間が長過ぎて嫌になる。

「なんでこんな忙しい医者なんて仕事を選んだんだ俺は…。」

今更ながら思い返してみても、自分が何故医師を目指したのか?と言う動機に思い当たらない。

とにかく医師にならねばと言う、強迫観念にも似た思いで必死に勉強し続けた気がする。

「俺が失くした記憶に関係あるんだよな……。いい歳してショックで記憶障害だなんて……。そんなに子供でもなかった筈なんだが?今だに思い出せないってのは、よっぽど……だったんだよな……。」

多分中学生になったばかりの頃だと思う。
俺はある衝撃的な出来事の後に発熱し、ショックで1ヶ月近い期間の記憶を失くした。
それ以降、失くした記憶を思い出そうとする度に、目の前が真っ赤に染まり動悸を感じて動けなくなる。

典型的なパニック発作だったのだと、今なら冷静にそう思える。

俺の状態を心配した家族に、無理矢理連れて行かれたクリニックでのカウンセリングで、精神科医から思い出す努力は不要だと何度も言い聞かされた。
今思えばかなり強引な治療法だと思うが、俺は素直に従った。
おかげでパニック発作を起こすこともなくなり、すぐに普通に暮らせるようになった。

だが、何故か医師にならなくてはいけないと言う、強い思いだけは消せなかった。

父も兄も、それには反対しなかった。
おそらくだが、何か知っているのだろう。

俺はあえて聞かなかった。

実際苦労はしたが、医師になったことに後悔はない。
鈴加と暮らし始めてからは、逆に医師で良かったとさえ思う。

「俺が鈴加を護る。必ず幸せにする。だから早く俺に落ちてこい鈴加。」