次の日学校に着き教室に入ると七夏が私に駆け寄ってきてニコニコと話かけてくるが私は無視を貫き通す。
七夏は負けじと諦めずに私に話しかけてくるのを周りの奴らは面白半分に笑っている。
七夏はコソコソと自分を嘲笑うことに気付いて静かに席に戻って行った。席についた七夏を数人の男子が囲んでいた。
七夏の襟を掴んで耳元で何か呟いて不気味に笑っている。七夏は青ざめた顔をして顔を伏せていた。
男子が七夏から離れて行き七夏を見ると少し震えていた。私は気にせず鞄から小説を出して読み始める。
少ししてチャイムが私は小説をはしまい前を見ると七夏はずっと震えていた。
私は席を立ち七夏の手を引いて教室を出る。中庭に着いた時に授業始まりのチャイムが鳴り私は自動販売機で緑茶を2本買い1本無言で七夏に渡す。
七夏の隣にベンチに座り私は無言で緑茶を飲み始める。
「…なんで助けてくれたの」
「…べつにあんたが震えてたから」
「良く気付いたね…今まで誰も気付かなかったのにすごいね」
「…楽しい?そんなヘラヘラしてて」
「こうしてないと壊れてしまいそうなんだ」
それをしてる時点であんたの心は壊れてるよ
それにすら気づいていない七夏は自分を見失っているんだろうな。
七夏は静かに緑茶を飲み始めて少し震えがおさまっていた。さっきあいつらに何を言われたのかはあえて聞かない。
「羽久安ちゃんは優しいね」
「…」
「僕羽久安ちゃんに嫌われてるのに助けてくれたもんね」
べつに七夏を嫌ってる訳ではない。
かと言って七夏と仲良くなる気はさらさらないんだ。余計な行動したかもしれないけどな
「僕と南人は幼馴染なんだ」
「…」
「幼稚園の頃からずっと一緒でいつも一緒にいたんだ。中学の頃には南人は喧嘩が強くて人気で僕はいつも護られてたんだ。」
「…そう」
「ここに入学してからも龍南としてテッペンを取ってからも南人は変わらずに僕と仲良くしてくれて龍南のみんなも僕と仲良くしてくれたんだ。でも…龍南と仲がいい僕を怖がってみんな僕を避けてる」
「…」
「僕もわかってたけど…龍南はいい人だからだから僕はみんなに避けられてもいいって思ってたんだけど…やっぱりクラスでみんなから避けられるのは辛いね」
だろうな。龍南も七夏は相当大事にしてる。じゃなきゃ私に近寄るななんてことを言ってきたりなんてしない。
龍南といる七夏は偽りのない楽しそうな笑顔でいてクラスでは無理に笑っている。
愛されキャラとか最初は思ってたけど相当苦労してるんだろうな。
「…僕じゃ羽久安ちゃんと仲良くなれない?」
「…」
「…助けてくれてありがとう」
「…」
「僕は教室に戻るね」
「…」
「羽久安ちゃんも転校生早々にあんまりサボらない方がいいよ!」
こいつ馬鹿だよな。自分のことより私の心配するとかお人好しなんだろうな。
颯斗…に似てる気がする。
「…あのさ」
「ん?」
「…蝶羽って知ってる?」
「え?知ってるよ!あの歴史史上最強と呼ばれた誰もが憧れて恐れられた蝶羽!」
「…そっか」
「でも、なんで?」
「…私なんだよね」
「え?どう言うこと?」
「蝶羽って私なんだよね」
「…嘘…だよね?」
私はポケットから携帯を出して待受を見せると七夏は目を見開いて私と待受に写る私を交互に見合っている。
私は眼鏡を取り七夏を見つめると。
七夏は口を開けて唖然として驚いていた。
「…なんで…あの蝶羽が…え?」
「理由が合って姿を消してる」
「…え…でも」
「私はもう蝶羽は捨てたんだ」
「…いいの?探してるよ羽久安ちゃんのこと龍南のみんなが」
「…」
「南人が羽久安ちゃんを探してる。俺がここまで登りつめたの蝶羽のおかげだって…」
「…知ってる。判治南人…あいつのことは良く知ってるよ」
「…なんで」
「知らないフリをした。デカくなったあいつを今の私があいつに名乗る権利はない」
はじめて判治南人に会ったのは私が中学2年の時だった。河原でボロボロになっていたあいつを助けたのは私だった。
今のあいつじゃ想像出来ないほどの傷で倒れていた。手を差し伸べるとあいつは素直に私の手を掴み弱々しかった。
それから何度かボロボロになったあいつを見かけては声をかけていく内にあいつも私に懐いてきていた。
"なんで南人は喧嘩すんだ?"
"負けたくねぇから"
"そんだけの理由でか?"
"ダメなのか?"
"べつにいいと思うよ"
"蝶羽なんでそんなに強いんだよ"
"ぅーん…才能?"
''腹立つ答えだな"
"冗談だよ!…そうだな守る者があるから"
"守るもの?"
"守る者がある奴は強いんだよ"
"そうなのか?"
"ああ、お前はそれに出会ってないだけだ。それに強い奴はな自分の弱さを認めてる奴だ"
"弱さ?"
"ああ、強い奴は本当の弱さを知ってるんだよ。いずれお前にも分かるよ。"
"俺もそれに気付いたら蝶羽みたいに強くなれるのか?"
"ああ、きっとなれるさ。お前がでっかい奴になったら…私の元に来いよ"
「…羽久安ちゃん!?」
「…あ、ごめん」
「どうしたの?」
「いや、昔のことを思い出してた」
「…そっか」
昔の判治南人との会話を急に思い出した。
あの頃全然弱々しかった南人は今ではこんなにデカくなっちまったんだよな。
あいつは私のには気付いてないみたいだけど私は南人を知っててここに来たんだ。
南人がここにいたのはたまたまだけど昨日南人を目の前にした時に確信したよ。
こいつは強くなったと…。
「龍南には言わないの?」
「ああ…だから七夏も黙ってて欲しいんだ」
「…なんで僕に話してくれたの?」
「なんでだろうな…お前になら話していいかもって思ったのかもな」
「羽久安ちゃん…」
私は眼鏡をかけ直してベンチから立ち上がり屋上の方へと視線をやる。
龍南と書かれた大きな旗は相変わらず目立っていてあそこに南人が頭としていることに少し嬉しがある。
私との約束をちゃんと貫き通した南人に蝶羽を捨てた私にはあいつの前に堂々と姿を現す権利はないんだ。
「今は…もう普通の高校生なんだよ」
「羽久安ちゃん…」
「だから内緒な?」
「…わかったよ」
「…ありがとう」
私は緑茶の空き缶をゴミ箱に捨ててその場を立ち去る。丁度1限目が終わり教室から海弥が出てきた。
そう言えば1限目は海弥の授業なのすっかり忘れてたな。ま、数学とか嫌いだからサボってラッキーだけど海弥が私に気付きズカズカと歩いてきた。
「サボりやがったな」
「…たまたま?」
「嘘つけ俺の授業だってわかってただろ」
「…」
「神宮寺もサボりやがってよ」
「…」
「神宮寺知らねぇか?」
「…知らない」
「たくっ…あれほどサボるなって叩き込んでやったのに後で覚えとけよ神宮寺」
「…」
一応教師であるこの人がしてもいい発言なのだろうか。七夏は一体海弥に何をされたのだろうか。
「…げ」
「…」
「お、神宮寺そんなに俺に会いたかったか?」
「…いや、その」
「そうかそうか、先生は嬉しいぞ。どうだ?今から俺にきつ〜い教えを受けたいだろ?」
「…いや、です」
「そうかそうか、喜んで受けたいかなら今から数学準備室に一緒に行こうな?神宮寺」
「羽久安ちゃん助けて!」
「ほら行くぞ神宮寺」
海弥は無理矢理に七夏を連れてこの場を去っていった。七夏は青ざめた顔を本当に恐怖に怯えた顔をして連れ去られた。
私は呆れながら教室に入り席に着き2限目の授業の準備をする。授業が始まっても七夏は戻ってくることなく2限目が終わった。
相当調教されているのか3限目が始まる前には七夏はヘトヘトになって帰ってきた。席につきヘタっと机に伏せていた。
海弥は一体七夏に何を叩き込んだのだろうか
教師であるくせにやっていいのだろうか。
昼休みに入りお弁当を机に出すと七夏がさっきまでと打って変わって私の前に笑顔でたって"一緒に食べよ"っていって私の手を引いて教室を連れ去る。
私は七夏の思うがままに手を引かれて着いた場所は屋上だった。
「…七夏」
「今日龍南と一緒に食べる約束してたんだけど羽久安ちゃんとも食べたくてね!」
「私は…」
七夏は私の声なんかお構いなしに龍南しか立ち入る事の出来ない屋上に連れられた。
屋上に入るとそこには家なのかとツッコミたくなるくらいテーブルとソファーがあった。
龍南はそこにいた。
「お、七夏来たか…ってそいつ」
「なんでそいつがいんの」
「南人が認めたやつ以外立ち入り禁止だぞ」
「…」
「ごめん!でも、どうしても羽久安ちゃんも一緒が良かったんだ、ダメかな?南人」
「…七夏がそうしたいなら」
「南人!」
「いいのかよ南人」
「そうだよ、七夏傷付けた奴だぜ?」
「僕は大丈夫だよ!それに羽久安ちゃんはいい子なんだよ?僕を助けてくれたんだ!」
「…助けた?最低女が?」
「俺らに近寄りたくてわざと自分作ってるだけじゃねぇのか?」
「羽久安ちゃんはそんな人じゃないよ!だって羽久安ちゃんは!」
「…七夏いいよ」
「…あ…でも」
「私教室に戻るよ」
「羽久安ちゃん」
「七夏はみんなと食べるといいよ」
「…ごめんね」
「それにその人達の言う通り私は友達とか作る気ないし仲良くする気もないのは本音だから」
「…」
「ほら見ろやっぱり最低女じゃん」
「最低女はさっさと出ていけじゃないと女でも容赦なく殴り飛ばすぞ」
「…コータ!そんなの酷いよ!」
「だってこいつ性格最悪じゃん」
「そんなことないよ!」
「とりあえず早く出てけよお前見てると胸糞悪いんだよ」
私は軽くお辞儀をして屋上を立ち去ろうとすると南人に止められた。
一人だけ赤いフライトジャケットが目立つ。南人は私の前に立ち軽く睨み見下ろす。
今の私を見る南人に昔の可愛らしさがあった面影は全くなく私を獣のように見ていた。
「…お前上の名前は」
「…蝶野」
「蝶野?…そうかもういい出ていけ」
「…」
なんなのだろうか。私は言われるがままに屋上を静かに出て階段をゆっくりと下りる。すると丁度海弥と鉢合わせて海弥は驚いた顔をして見た。
「お前…屋上に?」
「…」
「あいつらと居たのか?」
「…七夏に無理矢理連れて来られただけ」
「何もなかったのか?」
「…追い出されただけ」
「そうか…」
海弥は龍南に用があるらしく私を通り抜けて屋上へと入っていった。昔関東のNo1暴走族の副総長をしていた海弥は龍南からしたら憧れの存在なのだろう。
きっと海弥には親しくしているに違いない。
きっと龍南も私の正体に気付いたら…きっと
私は教室に戻り一人で静かにお弁当を食べて残りの時間は小説を読んで過ごしていた。
5限目の授業ふと外に視線をやると屋上に赤いフライトジャケットを羽織った南人が立っていてこっちを見ている気がした。
風で綺麗な金髪とフライトジャケットが緩れていて映画に出てきそうな光景だ。
南人は奥へと歩いて行き見えなくなってしまった。本当に…でっかくなったな。
七夏は負けじと諦めずに私に話しかけてくるのを周りの奴らは面白半分に笑っている。
七夏はコソコソと自分を嘲笑うことに気付いて静かに席に戻って行った。席についた七夏を数人の男子が囲んでいた。
七夏の襟を掴んで耳元で何か呟いて不気味に笑っている。七夏は青ざめた顔をして顔を伏せていた。
男子が七夏から離れて行き七夏を見ると少し震えていた。私は気にせず鞄から小説を出して読み始める。
少ししてチャイムが私は小説をはしまい前を見ると七夏はずっと震えていた。
私は席を立ち七夏の手を引いて教室を出る。中庭に着いた時に授業始まりのチャイムが鳴り私は自動販売機で緑茶を2本買い1本無言で七夏に渡す。
七夏の隣にベンチに座り私は無言で緑茶を飲み始める。
「…なんで助けてくれたの」
「…べつにあんたが震えてたから」
「良く気付いたね…今まで誰も気付かなかったのにすごいね」
「…楽しい?そんなヘラヘラしてて」
「こうしてないと壊れてしまいそうなんだ」
それをしてる時点であんたの心は壊れてるよ
それにすら気づいていない七夏は自分を見失っているんだろうな。
七夏は静かに緑茶を飲み始めて少し震えがおさまっていた。さっきあいつらに何を言われたのかはあえて聞かない。
「羽久安ちゃんは優しいね」
「…」
「僕羽久安ちゃんに嫌われてるのに助けてくれたもんね」
べつに七夏を嫌ってる訳ではない。
かと言って七夏と仲良くなる気はさらさらないんだ。余計な行動したかもしれないけどな
「僕と南人は幼馴染なんだ」
「…」
「幼稚園の頃からずっと一緒でいつも一緒にいたんだ。中学の頃には南人は喧嘩が強くて人気で僕はいつも護られてたんだ。」
「…そう」
「ここに入学してからも龍南としてテッペンを取ってからも南人は変わらずに僕と仲良くしてくれて龍南のみんなも僕と仲良くしてくれたんだ。でも…龍南と仲がいい僕を怖がってみんな僕を避けてる」
「…」
「僕もわかってたけど…龍南はいい人だからだから僕はみんなに避けられてもいいって思ってたんだけど…やっぱりクラスでみんなから避けられるのは辛いね」
だろうな。龍南も七夏は相当大事にしてる。じゃなきゃ私に近寄るななんてことを言ってきたりなんてしない。
龍南といる七夏は偽りのない楽しそうな笑顔でいてクラスでは無理に笑っている。
愛されキャラとか最初は思ってたけど相当苦労してるんだろうな。
「…僕じゃ羽久安ちゃんと仲良くなれない?」
「…」
「…助けてくれてありがとう」
「…」
「僕は教室に戻るね」
「…」
「羽久安ちゃんも転校生早々にあんまりサボらない方がいいよ!」
こいつ馬鹿だよな。自分のことより私の心配するとかお人好しなんだろうな。
颯斗…に似てる気がする。
「…あのさ」
「ん?」
「…蝶羽って知ってる?」
「え?知ってるよ!あの歴史史上最強と呼ばれた誰もが憧れて恐れられた蝶羽!」
「…そっか」
「でも、なんで?」
「…私なんだよね」
「え?どう言うこと?」
「蝶羽って私なんだよね」
「…嘘…だよね?」
私はポケットから携帯を出して待受を見せると七夏は目を見開いて私と待受に写る私を交互に見合っている。
私は眼鏡を取り七夏を見つめると。
七夏は口を開けて唖然として驚いていた。
「…なんで…あの蝶羽が…え?」
「理由が合って姿を消してる」
「…え…でも」
「私はもう蝶羽は捨てたんだ」
「…いいの?探してるよ羽久安ちゃんのこと龍南のみんなが」
「…」
「南人が羽久安ちゃんを探してる。俺がここまで登りつめたの蝶羽のおかげだって…」
「…知ってる。判治南人…あいつのことは良く知ってるよ」
「…なんで」
「知らないフリをした。デカくなったあいつを今の私があいつに名乗る権利はない」
はじめて判治南人に会ったのは私が中学2年の時だった。河原でボロボロになっていたあいつを助けたのは私だった。
今のあいつじゃ想像出来ないほどの傷で倒れていた。手を差し伸べるとあいつは素直に私の手を掴み弱々しかった。
それから何度かボロボロになったあいつを見かけては声をかけていく内にあいつも私に懐いてきていた。
"なんで南人は喧嘩すんだ?"
"負けたくねぇから"
"そんだけの理由でか?"
"ダメなのか?"
"べつにいいと思うよ"
"蝶羽なんでそんなに強いんだよ"
"ぅーん…才能?"
''腹立つ答えだな"
"冗談だよ!…そうだな守る者があるから"
"守るもの?"
"守る者がある奴は強いんだよ"
"そうなのか?"
"ああ、お前はそれに出会ってないだけだ。それに強い奴はな自分の弱さを認めてる奴だ"
"弱さ?"
"ああ、強い奴は本当の弱さを知ってるんだよ。いずれお前にも分かるよ。"
"俺もそれに気付いたら蝶羽みたいに強くなれるのか?"
"ああ、きっとなれるさ。お前がでっかい奴になったら…私の元に来いよ"
「…羽久安ちゃん!?」
「…あ、ごめん」
「どうしたの?」
「いや、昔のことを思い出してた」
「…そっか」
昔の判治南人との会話を急に思い出した。
あの頃全然弱々しかった南人は今ではこんなにデカくなっちまったんだよな。
あいつは私のには気付いてないみたいだけど私は南人を知っててここに来たんだ。
南人がここにいたのはたまたまだけど昨日南人を目の前にした時に確信したよ。
こいつは強くなったと…。
「龍南には言わないの?」
「ああ…だから七夏も黙ってて欲しいんだ」
「…なんで僕に話してくれたの?」
「なんでだろうな…お前になら話していいかもって思ったのかもな」
「羽久安ちゃん…」
私は眼鏡をかけ直してベンチから立ち上がり屋上の方へと視線をやる。
龍南と書かれた大きな旗は相変わらず目立っていてあそこに南人が頭としていることに少し嬉しがある。
私との約束をちゃんと貫き通した南人に蝶羽を捨てた私にはあいつの前に堂々と姿を現す権利はないんだ。
「今は…もう普通の高校生なんだよ」
「羽久安ちゃん…」
「だから内緒な?」
「…わかったよ」
「…ありがとう」
私は緑茶の空き缶をゴミ箱に捨ててその場を立ち去る。丁度1限目が終わり教室から海弥が出てきた。
そう言えば1限目は海弥の授業なのすっかり忘れてたな。ま、数学とか嫌いだからサボってラッキーだけど海弥が私に気付きズカズカと歩いてきた。
「サボりやがったな」
「…たまたま?」
「嘘つけ俺の授業だってわかってただろ」
「…」
「神宮寺もサボりやがってよ」
「…」
「神宮寺知らねぇか?」
「…知らない」
「たくっ…あれほどサボるなって叩き込んでやったのに後で覚えとけよ神宮寺」
「…」
一応教師であるこの人がしてもいい発言なのだろうか。七夏は一体海弥に何をされたのだろうか。
「…げ」
「…」
「お、神宮寺そんなに俺に会いたかったか?」
「…いや、その」
「そうかそうか、先生は嬉しいぞ。どうだ?今から俺にきつ〜い教えを受けたいだろ?」
「…いや、です」
「そうかそうか、喜んで受けたいかなら今から数学準備室に一緒に行こうな?神宮寺」
「羽久安ちゃん助けて!」
「ほら行くぞ神宮寺」
海弥は無理矢理に七夏を連れてこの場を去っていった。七夏は青ざめた顔を本当に恐怖に怯えた顔をして連れ去られた。
私は呆れながら教室に入り席に着き2限目の授業の準備をする。授業が始まっても七夏は戻ってくることなく2限目が終わった。
相当調教されているのか3限目が始まる前には七夏はヘトヘトになって帰ってきた。席につきヘタっと机に伏せていた。
海弥は一体七夏に何を叩き込んだのだろうか
教師であるくせにやっていいのだろうか。
昼休みに入りお弁当を机に出すと七夏がさっきまでと打って変わって私の前に笑顔でたって"一緒に食べよ"っていって私の手を引いて教室を連れ去る。
私は七夏の思うがままに手を引かれて着いた場所は屋上だった。
「…七夏」
「今日龍南と一緒に食べる約束してたんだけど羽久安ちゃんとも食べたくてね!」
「私は…」
七夏は私の声なんかお構いなしに龍南しか立ち入る事の出来ない屋上に連れられた。
屋上に入るとそこには家なのかとツッコミたくなるくらいテーブルとソファーがあった。
龍南はそこにいた。
「お、七夏来たか…ってそいつ」
「なんでそいつがいんの」
「南人が認めたやつ以外立ち入り禁止だぞ」
「…」
「ごめん!でも、どうしても羽久安ちゃんも一緒が良かったんだ、ダメかな?南人」
「…七夏がそうしたいなら」
「南人!」
「いいのかよ南人」
「そうだよ、七夏傷付けた奴だぜ?」
「僕は大丈夫だよ!それに羽久安ちゃんはいい子なんだよ?僕を助けてくれたんだ!」
「…助けた?最低女が?」
「俺らに近寄りたくてわざと自分作ってるだけじゃねぇのか?」
「羽久安ちゃんはそんな人じゃないよ!だって羽久安ちゃんは!」
「…七夏いいよ」
「…あ…でも」
「私教室に戻るよ」
「羽久安ちゃん」
「七夏はみんなと食べるといいよ」
「…ごめんね」
「それにその人達の言う通り私は友達とか作る気ないし仲良くする気もないのは本音だから」
「…」
「ほら見ろやっぱり最低女じゃん」
「最低女はさっさと出ていけじゃないと女でも容赦なく殴り飛ばすぞ」
「…コータ!そんなの酷いよ!」
「だってこいつ性格最悪じゃん」
「そんなことないよ!」
「とりあえず早く出てけよお前見てると胸糞悪いんだよ」
私は軽くお辞儀をして屋上を立ち去ろうとすると南人に止められた。
一人だけ赤いフライトジャケットが目立つ。南人は私の前に立ち軽く睨み見下ろす。
今の私を見る南人に昔の可愛らしさがあった面影は全くなく私を獣のように見ていた。
「…お前上の名前は」
「…蝶野」
「蝶野?…そうかもういい出ていけ」
「…」
なんなのだろうか。私は言われるがままに屋上を静かに出て階段をゆっくりと下りる。すると丁度海弥と鉢合わせて海弥は驚いた顔をして見た。
「お前…屋上に?」
「…」
「あいつらと居たのか?」
「…七夏に無理矢理連れて来られただけ」
「何もなかったのか?」
「…追い出されただけ」
「そうか…」
海弥は龍南に用があるらしく私を通り抜けて屋上へと入っていった。昔関東のNo1暴走族の副総長をしていた海弥は龍南からしたら憧れの存在なのだろう。
きっと海弥には親しくしているに違いない。
きっと龍南も私の正体に気付いたら…きっと
私は教室に戻り一人で静かにお弁当を食べて残りの時間は小説を読んで過ごしていた。
5限目の授業ふと外に視線をやると屋上に赤いフライトジャケットを羽織った南人が立っていてこっちを見ている気がした。
風で綺麗な金髪とフライトジャケットが緩れていて映画に出てきそうな光景だ。
南人は奥へと歩いて行き見えなくなってしまった。本当に…でっかくなったな。