あれから1年…

「…デカいな」

私の目の前に広がる光景は綺麗でデカい校舎が広がっていた。

今日から私が通う有名な学校だ。

明記樟南高等学院…通称明樟(めいしょう)

頭脳明晰。

運動神経抜群。

お金持ち。

美男美女。

な人達ばかりが入学する学院だ。

私は特別頭も良くないし家は金持ちって訳でもなくて…美女でもなんでもないが…。

私の父親がここの理事長と昔から仲が良くて理事長が私を歓迎してくれてギリギリここの試験に受かり今日から通う事になった。

誰もが入学するのに憧れるこの学院にはあるもう一つ有名で危険な学院だ。

私は屋上の方に視線を見上げる。

"龍南"

と書かれた大きな旗が風で揺れ動いていた。

龍南とはこの学院のテッペンを張ってるヤンキーだ。ここはヤンキー校としてもすごく有名な学院だ。

その龍南に憧れて入学する奴らもいるらしい

「…しょうもねぇ」

私は学校の中に足を踏み入れて職員室に向かうが無駄に広すぎるこの学院は方向音痴の私には苦難だ。

顔を引きつらせながらやっとの思いで職員室にたどり着き入る。

「蝶野羽久安です」

「来たか羽久安」

「…海弥斗さん」

「何だよ昔見たいに海弥って呼べよ」

「…」

「羽久安…変わったな」

この人は向井地 海弥斗(むかいち みやと)25歳
颯斗の実のお兄さんだ。

颯斗と仲が良かった私は海弥にもたくさんお世話になった。

颯斗が居なくなってから海弥と会うこともなくったから久しぶりに見る。

相変わらず颯斗と似ている…。

「お前の担任任されたんだよろしくな」

「…はい」

「…行くか」

昔の面影がなくなった私にぎこちない態度をとる海弥に少し申し訳なさが出る。

教室に向かう途中も私と海弥の中に会話はなく黙々と歩いていた。

すると海弥が立ち止まり後ろを歩いていた私にゆっくり振り返り悲しい顔をして発する。

「…蝶羽は…っ!?」

「…喋んな海弥」

「…すまねぇ」

昔の話をしようとした海弥に私は急に殺気を出して口調が昔に戻った私に焦りを見せた海弥は私の前を歩き出す。

別に海弥に対して怒ってる訳ではない。

ただ…自分を許せないだけなんだ。

「ここがお前のクラスだ」

「ん」

「呼んだら来いよ」

海弥はそう言うと騒がしい教室の中に入って行き急激に静かになる教室。

海弥が教師になった理由を知ってるからこそ私は海弥に申し訳なさが生まれる。

海弥に呼ばれて私はゆっくりと教室に入り教壇に上りみんなに視線を向ける。

"うわ…地味子"

"なんであんなのがここに?"

おい。聞こえてんぞ。

確かにいまの私は地味としか言えない程の地味子だろう。

スカートの丈は膝までダサい眼鏡をかけている。誰が見たって地味だ。

「お前らうるせぇぞ」

「…」

「は…っ蝶野自己紹介」

「…蝶野羽久安です」

「蝶野の席はあそこの席な」

「はい」

私は指示された席に座り適当に海弥のホームルームを聞き窓からの景色を眺める。

ふと、ここから丁度見える位置にある屋上を見るとそこには綺麗な金髪の男子が立っていた。

丈の長い赤いフライトジャケットを着ていた
遠いから彼の表情までは見えないけどなんとなくわかる。悲しい表情だと。

すると女子達が私と同じ方向を見ていた。

「今日も判治様美しい」

「本当にかっこいいよね」

「見れるだけで1日幸せ~」

そんな会話が聞こえてきてもう一度見るがそこにはもう彼の姿はなく龍南と書かれた大きな旗だけが揺れ動いていた。

判治様ねぇ…相当人気なんだろうな。
私も一度龍南の話を聞いた事がある。

1年生にしてここのテッペンを取りヤンキー界にも名を広めていた。そんな龍南を潰しに踏み込んだ奴らは瞬殺で地べたに捻り潰されたと聞いた事がある。

そんな龍南の頭が…判治 南人(はんじ みなと)
その下に就く奴らがNo2と四天王だ。

No2…高田 翔太(たかだ かけた)
判多 航太(はんだ こうた)通称…サスケ。
矢田 伴都(やだ ともと)通称…血乱(ちらん)。
早川 飛鳥(はやかわ あすか)通称…サディ。
鳶谷 雅晴(とびや まさはる)通称…音(おと)。

これが四天王だ。
龍南に踏み入んだ奴らは四天王で瞬殺らしい
ヤンキー界で結構有名な奴らだ。

1限目のチャイムが鳴るが私は教室を出ようと席を立つが…

「転校生が早々にサボったらダメだよ?」

「…」

「羽久安ちゃん真面目そうなのにサボるんだ」

「…誰ですか」

「あ!ごめんね僕は神宮寺七夏(じんぐうじ ななつ)女の子見たいな名前でしょ?」

「…そうですか」

「なんで敬語なの?」

「…」

「僕の事は七夏って呼んで!それと敬語禁止ね何かよそよそしいからね!」

「…」

なんなのだろうか。神宮寺…七夏ね。
確かに女の子見たいな名前だし顔も可愛い顔してるから似合ってんじゃない。

愛されキャラなのかずっとニコニコしているけれど…目に輝きがない。

まるで今の自分を見てるようでイライラする
私は席に座り直し七夏を無視する。

丁度先生が教室に入って来て七夏は急いで自分の席に戻って行った。私は仕方なく授業を受けることにしたが話を聞かずに外を眺める

何度か先生に呼ばれてたけど私はガンスルーしてて先生は諦めていた。私は動じることなく外を眺めていた。

昼休みに入り私はお弁当を机に並べて食べはじめる。すると…

「僕も一緒にいい?」

「…なんで?」

「えーと…一緒に食べたいなって」

「他の人と食べたら?」

「え…あ…そうだよね…ごめんね」

七夏は私から離れて友達の所に行ったと思うと自分の席に戻りお弁当を食べ始めていた。

私は不思議に思い見ていると会話が耳に入る

「転校生にまで拒否られるとかうける」

「あいつやっぱりボッチだよな」

「あの判治さんと仲良いからって調子乗ってるからいけないんじゃね?」

…そう言うことか。

あいつ友達いねぇんだな。だからと言って私も友達とか作る気はないから関係ないが…

自然と七夏の席にお弁当を持って足を進めていた。七夏の机にお弁当を並べて空いている椅子をかりて七夏の前に座り黙々とお弁当に箸を進める。

七夏はびっくりしていて唖然としていた。

「…羽久安ちゃん」

「気が変わった」

「…ありがとう」

「…べつに」

七夏は凄く嬉しそうにお弁当を食べ始めていた。周りの奴らが何か言っていたが動じることなく私もお弁当を食べる。

きっと今まで一人で過ごしていたんだろうな
七夏は楽しそうに私にニコニコしながら話かけてくるが私は仲良くする気はないから無視する。

私はお弁当を食べると速やかに自分の席に戻りお弁当をしまい教室を出る。後から七夏がありがとうって言ってたけど無視だ。

私はお弁当を一緒に食べただけだ。

自動販売機に着き緑茶を買い中庭のベンチで優雅にお茶を飲みながら小説を読んでいると奥から話し声が聞こえてきて視線をやると

そこには丈の長いフライトジャケットを着た5人と仲良く話している七夏が居た。

さっき屋上出みた人は赤いフライトジャケットだったけど彼らは黒かった。

あれはきっと龍南の奴らだろうな。
本当に七夏は仲がいいんだな…有名な龍南と仲が良ければあんな影でしか悪く出来ない奴らは避けるだろうな。

彼らからは私の座ってるベンチは視覚で見えないだろうけどだいぶ近付いて来ていたから会話が徐々にはっきり聞こえてきた。

「今日転校生が来て一緒にお弁当食べてくれたんだよ!」

「転校生?」

「そりゃ良かったないい転校生で」

「うん!めっちゃいい子だよ」

「そうかそうか」

「…友達になれたらいいな…」

「…なれるよきっと」

「だといいけどな〜」

「頑張れよ七夏」

「おう!…あ、南人!」

「…七夏か」

そこには屋上で見た赤いフライトジャケットを着た彼だった。あれが判治南人か…。

七夏は彼に親しそうに笑顔で話していてその笑顔に偽りはなく楽しそうだった。私も軽く微笑みその場を静かに去ろうとするが…

「羽久安ちゃん!」

「…」

「こんな所に居たんだね」

「…」

「みんなこの子だよ!転校生の羽久安ちゃん」

「ふーんこの子がね」

「七夏と仲良くしてくれてありがとうね」

「…」

「ね!羽久安ちゃん良かったらなんだけど…これからもお弁当一緒に食べて欲しいな…」

「…なんで?」

「え…えーと…その友達になりたいなって…」

「…私…友達とかいらないから」

「…え…」

「羽久安ちゃんだっけ?ちょっと言い過ぎじゃないのかな?」

「七夏は君と仲良くなりたいだけなんだから別にいいだろ?」

「私は友達いらないって言いましたよね?」

「…っ」

「お前調子乗んなよ」

「七夏…こんな奴やめとけ傷付くだけだ」

「…っ」

「行くぞ七夏」

「…っ…羽久安ちゃん…」

龍南は七夏を連れて私の前を通り抜けて立ち去って言ったが赤いフライトジャケットが私の前に立ち塞がる。

「…」

「…最低だな」

「…」

それだけを残して彼も私の前を通り抜けて去っていった。龍南にどう思われようが私には関係のないことだ。

七夏には悪いけど私は友達とかいらねぇんだよ。友達を作りにここに来た訳じゃないんだよ。

私も中庭をゆっくりと歩き出し教室に着く頃には丁度チャイムが鳴りお昼休みが終わった

教室に入ると七夏がもう席に座っていてずっと下を向いて伏せていた。私も席に着くと七夏が私に気付き見たが私は気付いていないフリをして残りの授業を受けた。

放課後になり私はゆっくりと帰る準備をして教室を出て廊下を歩く。

ふと、反対側の校舎への廊下を見つけて自然とそっちに足を踏み入れていた。

反対側の校舎を真っ直ぐ進むとそこには非常口がありそこを開けようとすると

「おい」

「…」

「お前ここで何してんだよ」

「うわっ昼の最低女じゃん」

「…」

「何してるって聞いてる」

「…べつに」

「ここは俺ら龍南の溜まり場屋上のある校舎だから教師以外ほとんど生徒は立ち寄らないんだよ。」

「へぇ…」

「…お前なんで七夏と友達になる事を拒否したんだよ。」

「…」

「七夏は俺らのせいで全学年の奴らから避けられてんだよ」

「…ならやめたらいかがですか」

「は?」

「あなた達が彼に構わなければ友達の1人や2人出来るんじゃないんですか」

「お前…どこまで最低なんだよ」

「性格悪すぎだろ」

「そうか。なら今後一切七夏に近寄るな」

「私は一度も近寄ったつもりはないです」

「ってめぇ…」

「なにこいつ腹立つ」

黒いフライトジャケットを羽織っている4人ら私の発言に殺気を少し出しながら睨みつけていた。私は一切動じることなく軽くお辞儀をして来た道を戻ろうと振り返るとそこには赤いフライトジャケットを羽織った判治南人がいて私を酷く睨んで見下ろしていた。

昼のことから私は相当龍南に嫌われたのだろう判治南人の後に立つ高田翔太も私を睨みつけていた。

するとその後からひょこっと七夏が姿を現す

「…羽久安ちゃん…」

「…」

私は無視をして彼らの横を通り抜けて去る。後から七夏が"僕は羽久安ちゃんを信じてる"とか叫んでたけど無視だ。

私を信じてるとか馬鹿なのだろうか。
私はそんな友達ごっこに付き合ってる暇はないをだよ。

龍南かなんか知らないけど私は彼らとも関わる気も全くないんだよ。