見とれた余韻に浸りつつ歩いていると、もう家だった。

「たっだいまー!」

おかえりー、と母の声。

「回覧板あるよー? なんかメモ? も貼ってあるー!」

「あらそ、じゃ持ってって」

このっ。

「えー、"近くに越してきた瀧上さんの所に今度からお願いします"だって。どこ?」

「あー、こないだ挨拶しに来た! ほら、ずっと工事してたじゃない、古いアパート。すんごいきれいになったとこ。あそこよ!」

あー、ずっと工事してたアレか。

「まるっきり建て替えよねー。あそこかぁ〜」

まあ、行こう。

「行ってきまーす!」

「はーい、行ってらっしゃーい!」

ご機嫌な人だ。