「咲笑?
何、言ってる?
咲笑の他に好きな人なんて、いるわけ
ないだろ?
俺、何か、誤解させるような事した?」

純ちゃんは、私を抱きしめる腕に力を込めた。

「だって!
純ちゃん、他に好きな人がいるから、筋トレ
始めたんでしょ?
苑も私にダイエットしろって言うし、
純ちゃんの浮気に気づいてるんでしょ?」

純ちゃんは、もう一度、私にキスをした。

「咲笑、かわいい。
そんな勘違いして、ひとりで悩んでたの?
咲笑がヤキモチ妬いてくれるなんて、
嬉しいよ。」

え? 勘違い?

私が、涙で潤んだ目で純ちゃんを見ると、純ちゃんは優しく微笑んで言った。

「咲笑、前に一緒にドラマ見てる時に言った
だろ?
私もあんな風にお姫様抱っこされてみたい
って。
俺が筋トレを始めたのは、他の誰でもない、
咲笑をお姫様抱っこするためだよ。」

「っ!!」

「苑は、俺が筋トレするより、咲笑が
ダイエットする方が早いって言ってたけど、
俺はそのままの咲笑を抱き上げてみせた
かったんだ。」

「嘘… 」

「こんな時に嘘言ってどうする?
俺が愛してるのは、今までも、これからも
咲笑だけだよ。」

純ちゃん…

私は、涙が止まらなくなった。

最初とは違う、嬉しい涙。

私、なんで純ちゃんを疑ったんだろう。

純ちゃんは、こんなにも私を思ってくれてるのに。

何の気なしに言った、些細な一言を叶えるために、何ヶ月も筋トレしてくれるぐらい、私の事を思ってくれてるのに。

私、純ちゃんのお嫁さんになれて、良かった。