俺と咲笑は、同じ課だが、係が違う。

咲笑の上司の係長は、横暴で理不尽な事を言う人だったが、俺が助けてやる事は出来なかった。

デート中に咲笑は愚痴を零す。

俺は、咲笑が目の前で理不尽に叱責されるのを見たくはなかった。

だから、

「仕事、辞める?」

と聞いた。
咲笑の人生、俺が引き受ける覚悟だった。

「は? 辞めたいけど、無理でしょ?」

咲笑は諦めたように笑う。

「辞めていいよ。結婚しない?」

咲笑は驚いた顔をする。
それでも、俺が真剣に言ってる事が分かると、

「いいの?
私、わがままだよ。
多分、一生、純ちゃんを振り回すよ。」

と聞いた。

俺は思わず、笑ってしまった。
かわいい。
わがままって、自覚はあるんだ。