「お日様沢山ー」


少女が嬉しそうにはしゃいでいた。少年はその光景に驚いていた。

辺り一面に絵本に描かれていた“太陽の花”が咲き乱れていたのであった。

しかしそれは幻影だったらしく、まもなくして消えた。

少女は残念そうに俯いてしまった。


『どうでしたか?』

「…悔しい」

『どうしてです?』

「俺が叶えるはずの願いをお前が叶えたから」


ああ、と男は言った。少年は少女以上に落ち込んだ様子だ。

すると男は白と黒の縦じまの模様をした種を少年に手渡した。

少年は首を傾げてこれがなんなのかを尋ねた。


『それはですね…さっきの太陽を咲かせる種なんですよ』

「何で俺に?」

『お嬢ちゃんはきっと本物を見たがっていると思いましてね』

「どうやったら育つんだ?」

『普通に育てる花と同じですよ。夏に植えて下さいね』

「何で持ってるんだ?」

『それは私が放浪人だからです』

「…あっそ」

『今年はもう遅いですから来年ですね』

「…あんがと。最後に聞いて良い?これなんて言うの?名前」

『確か向日葵…でしたね』

「ふーん…ま、頑張ってみるよ」

『頑張って下さい。では私はこれで』